更新日:2023年08月25日 17:16
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性風俗、犯罪、怪異現象…“住みたい街ランキング上位”「池袋」という街の正体

新宿・渋谷と並ぶ副都心の一つ、「池袋」。近年では再開発も進み、「住みたい街ランキング」の上位に位置するなど大きな変貌を遂げている。しかし一口に池袋について書かれたものは意外と少ないはずだ。この連載では、そんな池袋を多角的な視点から紐解いていきたい。
池袋 ロマンス通り

ロマンス通り

筆者の脳にこびりつく両親の言葉

「12時すぎたら銃声が聞こえるから、この街は」 そう、両親から言われたことを覚えている。私が通っていた幼稚園は、池袋北口のロマンス通りを抜けたところにあった。ロマンス通りを含めたこのエリアは、池袋の中でも一大繁華街を形成していて、治安が良い、とはけっして言えない場所だ。 いつも、自転車の後ろに乗りながら、そう言い聞かされていた。その言葉が、私をおどすためのものだったのか、本当にそうだったのか、今となってはわからない。 でも、なぜだかその言葉の記憶は、幼い私と両親が交わせた楽しい会話の一幕として、妙な粘着力で私の脳にこびりついている。話している内容の暗さに反して、なぜだか楽しげな記憶が残っているのだ。

池袋の「多様性」は「混沌」だ

私はこれから、池袋について書こうと思う。生まれてから今まで(といっても短い間だけれども)、ほとんどこの近辺で人生を過ごしてきた。そこには楽しい思い出も、怖い思い出も、苦い思い出も、ある。 池袋について書かれたものは、そう多くない。同じ副都心として知られている渋谷や新宿については、文化論のようなものも含めて、さまざまなところで言及されている。どうして池袋はあまり書かれてこなかったのだろうか。 その理由は、池袋の姿があまりにも多面的だからだと思う。街の中に「多様性」がある、といってもよい。多様性というと、最近話題のSDGsやらESGのことやらが思い出されるけれど、池袋の多様性はそうした「みんな違ってみんないい」というような、生ぬるい多様性とはまったく違う、むしろ「混沌」と言った方がよい「多様性」だと私は思う。
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新宿・渋谷と比べても池袋の特異性は際立つ
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ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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