更新日:2023年08月25日 17:16
ライフ

性風俗、犯罪、怪異現象…“住みたい街ランキング上位”「池袋」という街の正体

「暗い池袋」と同時に存在する「明るい池袋」

2022年、作家の花房観音と中村淳彦が『ルポ池袋 アンダーワールド』(大洋図書)という本を出版した。珍しく、池袋にフォーカスを絞った都市論である。詳しい中身は同書に譲るとして、ここではタイトルにもあるように「アンダーワールド」、つまり一般的な世界とは異なる「地下世界」と関連のある池袋の姿が多く描かれている。 性風俗、犯罪、怪異現象、確かに池袋はこの手の暗いことがらと関係が深い。そしてそれゆえに、池袋全体がどこか危ない街だという印象を持つ人も多くいる。もちろん、こうした池袋の姿も、池袋の一面だろう。そのような暗部の池袋をこの本は克明に描き出すことに成功している。 しかし私はやはり、池袋はそれだけではない、と思うのだ。「暗い池袋」と同時に「明るい池袋」もある。それは、池袋で過ごしてきた私自身の率直な感覚でもある。まさに、私が幼い頃、池袋は拳銃の音が聞こえる街だと、両親と話した記憶が楽しい思い出として残っているように、池袋にはさまざまな側面が存在するのではないか。 そこで、ここからは池袋について、断片的に私が知っていること、見たこと、聞いたこと、を書いていこうと思う。毎回、話題はさまざまな方向に飛んでいくだろう。回ごとにつながりはない。そこで書かれるのは、ただ、現在の、ありのままの池袋の姿である。そんなありのままの池袋の姿をただひたすら書きとめていくことが、ひいては池袋という、混沌とした街の全体を描くことにつながると思うのだ。 「12時すぎたら銃声が聞こえるから、この街は」と話した楽しい思い出に、深く沈んでいこう。 <TEXT/谷頭和希>
ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
1
2
3
おすすめ記事
ハッシュタグ