ニュース

全国の水族館に“わずか3頭”しかいないラッコ。輸入も繁殖も難しい…それでも諦めない人々の思い

日本での繁殖が頭打ちに…ラッコの「意外な気質」とは

 それでも日本は、1982年にアメリカからラッコを輸入して以来、水族館同士の貸し借りで繁殖に努め、1994年のピーク時122頭のうち半数以上は日本の施設で誕生させている。
[日本からラッコ絶滅]の危機を救え!

”ラッコのお食事タイム”になると、2頭の姿をひと目見ようと水槽前に人々が殺到。撮影会のような雰囲気に

 しかし、繁殖も頭打ちに。それにはラッコの気質が大きく関わっている。 「ラッコは穏やかでやさしいというイメージをお持ちの方も多いと思いますが、非常に気性の荒い生き物。オスは交尾をするためならメスや子供を殺してしまうこともある。そして交尾が終われば、もうそれまで。  そのため飼育下でメスが妊娠・出産したら、必ずオスと離さなければいけない。生まれた子供がメスの場合、オスは自分の子供でも襲うので近親交配になる恐れもある。たくさん生まれれば生まれるほど、自館には置いておけないんです」(石原さん) [日本からラッコ絶滅]の危機を救え! そうなると、オスは交尾の仕方を見て学習するということができなくなり、繁殖能力は低下していく。  仮にメスが妊娠しても、流産や子宮破裂などで出産に至らないケースも少なくないという。

「すぐ死んでしまう繊細な動物なんです」

 そもそも同館にいるメイは高齢で、キラは福岡にいるオスと兄妹関係にあるため近親交配になるので、これ以上の繁殖は見込めない。  となると、繁殖以外でラッコを存続させる道はあるのだろうか。
[日本からラッコ絶滅]の危機を救え!

鳥羽水族館でラッコの飼育に携わる石原さん。「ラッコの減少を予測し、対策もしてきたが、うまくいかないことも多かった」

「輸入は途絶えているものの、完全にできないわけではありません。しかし運送に必要な航空機を1機チャーターするのに、巨額な費用がかかる。誰が負担するか? 受け入れる園館がするしかない」と石原さんは語る。  続けて、「飼育技術や知識のある人間がいないとラッコは取り扱えない。すぐ死んでしまう繊細な動物なんです」とも。  日本で受け入れ先があるかといえば、ラッコを飼育する2館のみ。継続的にラッコを観察している園館でなければ、飼育技術の継承は難しいのだ。
次のページ
それでも諦めない石原さんの思い「一生飽きることがありません」
1
2
3
おすすめ記事