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好調「業務スーパー」と上場廃止の「いなげや」…3年前は同規模だった両社の明暗が分かれた理由

加盟店が支払うロイヤリティは「総仕入高の1%」

 神戸物産は、フランチャイズオーナーを儲けさせる仕組みを作り、出店・拡大を促しています。  フランチャイズ加盟店が神戸物産に支払うロイヤリティは、総仕入高の1%。しかもこれは直轄エリアと呼ばれる関東、関西圏などに出店した場合で、それ以外の地方エリアは対象商品の仕入高の1%に設定されています。  業種が少し異なりますが、24時間営業するセブンイレブンのロイヤリティは売上総利益の45%。粗利に応じて分配する仕組みになっており、加盟するオーナーは半分ほどに縮小した利益の中から人件費や水道光熱費を捻出しなければなりません。安定的な店舗運営ができたとしても、次々と出店するほどの余裕が出るまでには時間がかかるでしょう。  神戸物産は展開するスーパーの稼ぎ方そのものも、一般的なものとは異なります。全国スーパーマーケット協会が出している統計情報と、業務スーパーの収益モデルを比較すると、非常に面白いことがわかります。

徹底的に消費者に還元する業務スーパー

 神戸物産が公開している損益シミュレーション(「決算説明資料」)によると、業務スーパーの一般的な売上総利益率は17.0%。一方、全国のスーパーマーケットの売上総利益率の平均は26.2%です。  つまり、売上高から原価を引いた粗利は業務スーパーの方が低いのです。しかし、業務スーパーは営業利益率が2.1%で、全国平均は1.4%。0.7ポイント業務スーパーが上回っています。  ここから導き出される仮説は、業務スーパーは顧客にとって付加価値の高い商品を販売し、利益を消費者に還元しています。それが顧客満足度を高めてリピート利用を促進した結果、客数が増えて家賃や人件費などの固定費負担が低くなっているのではないか、というものです。  営業利益率が高まれば、それは加盟店オーナーの利益の増加に直結します。この一連のサイクルが、オーナーの出店意欲に繋がっていると考えられます。  神戸物産は、加盟店オーナーと顧客の双方に利益を還元し、会社も成長するという好循環を作り出しているのです。
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拡大ペースに合わせて堅実に人材を採用
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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