好調「業務スーパー」と上場廃止の「いなげや」…3年前は同規模だった両社の明暗が分かれた理由
中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
コロナ禍を迎える前に売上規模が近かったスーパーマーケットの運営会社が、「業務スーパー」の神戸物産と、いなげやです。2019年度(いなげやは3月、神戸物産は10月決算)のいなげやの売上高は2454億円、神戸物産が2996億円でした。しかし、その差は急速に拡大します。2022年度のいなげやの売上高は2380億円、神戸物産は4068億円でした。3年ほどで1700億円もの差が生じたのです。
なぜ、これほどまでに水をあけられてしまったのでしょうか?
いなげやは東京都立川市に本社がある会社で、府中市や国分寺市など、エリアを限定して集中的に出店するドミナント戦略を得意としています。ドラッグストアの「ウェルパーク」の運営も行っています。
神戸物産は兵庫県加古川市に本社を置く会社。「業務スーパー」を全国に展開しています。
いなげやは売上高が横這いで推移し、2022年度は減収に陥ります。その一方で、神戸物産は2020年度から2022年度までの年平均売上成長率が110.8%。1割増のペースで増収を重ねました。
利益率にも大きな差が生じています。いなげやの営業利益率は0.8%ほど。神戸物産は6.8%です。
同じスーパーを展開する会社ですが、実はビジネスモデルが全く異なります。いなげやは直営店が中心なのに対して、神戸物産はフランチャイズ方式をとっているのです。神戸物産は店舗数が1007(2022年10月末)ありますが、直営店はわずか3店舗。いなげやは直営店を主体として全276店舗(2023年3月末)展開しています。
神戸物産は加盟店のオーナーが出店を希望すれば、家賃や人件費の負担なく店舗数を拡大することができます。直営店は初期投資から人材の教育・育成まですべて行わなければなりません。コロナ禍のような大変動が起こった際は身動きを取るのが難しく、昨今の人件費高騰やエネルギー高に見舞われると出店に尻込みします。
確かに、2社の明暗を分けたのは、ビジネスモデルの違いであることに間違いありません。神戸物産は極めて優れた戦略をとっている会社だと言えます。
神戸物産は毎年「1割増のペース」で増収
直営・フランチャイズの違いというだけなのか?
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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