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窃盗症の女性が“謝罪と弁償”を被害店に申し出た結果…「優しさが逆に痛かった」

被害店は「激しい怒りを抱えていた」

 高橋氏は通院先の主治医と相談して被害店への謝罪と弁償を申し出たが、そのときのことを克明に覚えているという。 「私は日記に『どの店で盗ったか』をメモしていたので、リストアップは容易でした。自分からやろうと思ったことなのに、謝罪文を書いているときは本当に情けなくなりました。  一部の店舗からは返礼があり、『治療頑張ってください。応援しています』と書かれていました。その優しさが逆に痛かったです。当然ですが、多くの店は激しい怒りを抱えていることが読み取れました。大半は『被害が証明できないので、受け取り拒否』とけんもほろろで……。改めて自分の犯した罪の大きさを認識しました」

盗らないことは「身軽で楽」

 万引きを辞め、地元のスーパーに入った日のことをこう振り返る。 「それまでは、盗ったものでカバンの中がパンパンだったわけです。そんな状態で、声をかけられないかと背中をこわばらせていました。ちゃんと買って、堂々と店を出る。盗らないことがこんなにも身軽で、こんなにも楽なんだなと感じました」  杓子定規で堅物――そんな形容のされ方をする模範生が心を蝕まれ、クレプトマニアになった。万引き(窃盗罪)が刑法犯である以上、刑罰は免れない。だが極端から極端へとひた走る、生きるのが不得手な人たちに犯罪者のレッテルを貼るだけで一件落着ではない。盗ることに執着しなければ生きられない人たちの根源的な悲嘆に耳を傾けることが、真の解決の一歩になるのではないか。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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