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窃盗症の女性が“謝罪と弁償”を被害店に申し出た結果…「優しさが逆に痛かった」

「化粧をする必要がない」から医療従事者に

 くわえて、性的な成熟が進んだことも、多感な時期の心理を圧迫した。 「女性的な体型になるのが嫌で、無理にダイエットを決行したりもしました。そもそも、男性に生まれなかったことに対する憤りがずっとあって、男性じゃなかったのは自分のせいなんじゃないかとさえ考えていました」  就職にあたって重視したのも、ジェンダーによるところが大きい。 「最初の就職は医療に従事したのですが、これは女性であることを求められないからです。ユニホームも服装も中性的で、化粧をする必要もありません。それが心地よいと思って選びました」

仕事に没頭することで得ていた満足感・達成感がなくなり…

 だが職場環境は劣悪を極めた。あらゆるハラスメントを受け、ときには手を出されたこともあるという。 「上司に認められたいという思いで、自分を追い込みました。やめることは逃げ、頑張るしか方法がわかりませんでした。ただもしかすると、お金を失いたくないという潜在的な意識があったのかもしれません」  結局、身内の交通事故などのトラブルによって実家に戻ることとなり、この企業とは縁が切れた。次に入社した企業は良心的な経営がなされていたと振り返るが、クレプトマニアになるきっかけにもなってしまう。 「その企業は、元同僚の紹介で入りました。その方のためにも、しっかりと貢献しなければと思い、とにかく朝から晩まで働きました。するとブラック企業でもないのに、私は鬱病になってしまったんです。  鬱病での休職期間が明けると、企業側が善意で私の業務量を調整してくれることになりました。そうなると、時間的な余裕はできましたが、収入が減ります。それにより、仕事に没頭することで得ていた満足感・達成感はなくなりました。  そのとき、持病である摂食障害に関する書籍を読んでいて、摂食障害とクレプトマニアの関連性が深いことを知ったんです。枯渇恐怖が常にあり、自分がクレプトマニアになってしまうのではないかという強い恐れを感じました」
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気付いたらどんどん食べ物を盗るように…
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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