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窃盗症の女性が“謝罪と弁償”を被害店に申し出た結果…「優しさが逆に痛かった」

気付いたらどんどん食べ物を盗るように…

 実際に万引きをするまでには、段階があったという。 「最初は値札の貼り替えから始まって、徐々にステップアップした感じです。パンを1つ盗んでから、気付いたらどんどん食べ物を盗るようになっていました」  高橋氏は、万引きが犯罪行為だとわかっていながら依存していく過程を、次のように自己分析する。 「学生時代に勉学はもちろん、部活動でも部長を務めるなど、模範的に振る舞ってきました。これは今考えると、“依存”だったのかも知れません。学生時代は勉学や部活に、そして社会人になってからは仕事に依存し満足感・達成感を得ることですることで、自らを生かしてきた。その依存の対象が万引きになってからは、それが間違ったことだとわかっていても、その手を止めることができませんでした。  そしてもう1つ特徴的なのは、他人に弱音や本音を吐き出せない性格だったことです。私が運営する自助グループでも、他人に癒やされる術を知らない人は多いです。日々を子育てに追われている主婦などが、万引きをしてみたらすっきりしたという話を聞くこともあります。  あるいは高校生グループのなかでイケてない子が、承認欲求から万引きをして仲間内で認められるケースもあります。居場所がなく、誰にも心を預けられない人が、万引きによって溜飲を下げるようなところがどこかにあると思います

「被害者」になって痛みを理解した

 高橋氏は、自身が現在まで万引きをやめ続けるきっかけになった大きな経験として、置き引きの被害体験をあげる。これは、クレプトマニア治療で有名な精神病院への入院中に起きた。 「これまで、お店に対する罪の意識が著しく低かったと思います。私だけでなく、多くのクレプトマニアがままならない思いを抱えていて、盗ることによって苦痛を紛らわしているようなところがあります。しかし盗まれる側になったとき、やっと被害者側の痛みを理解できました
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被害店は「激しい怒りを抱えていた」
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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