更新日:2012年04月23日 10:16

今の円安水準が長続きしない理由とは?

マネーな人々 今週の銭格言 【選者】政治経済学者 植草一秀氏 1ドル=75円台まで進んだ為替レート。円高の行きすぎが製造業の海外流出を招くとの警戒論を生み出した。だが、為替理論は物価上昇率の低い日本の円上昇を当然視する。むしろ、買われすぎていない日本円の再上昇を警戒すべきだ。 ◆ビッグマック指数を見れば、米ドル/円レートは行きすぎた円高ではない!【後編】 ←【前編】はこちら  現在のビッグマック1個の価格は日本で320円、米国で4.2ドル。そこから計算すると、1ドルは76.2円であることがわかる。これがビッグマックで測った購買力平価というものになるわけだ。  日本円の場合、現実の為替レートとの乖離は極めて小さい。つまり、1ドル=80円台では円高が行きすぎているとは言えない状況ということになる。  為替レートを変動させる要因はいくつもあるが、最近の傾向を見ると、米国長期金利とドル円為替レートとの連動関係が強い。  米国景気が強く、米国金利が上昇する局面でドルが上昇し円は下落する。逆に、米国景気が弱く米国金利が低下する局面でドルが下落し、円高へと進む。  これから警戒が必要なのは、’13年の米国経済である。米国では’13年から超緊縮財政政策が始動することになっている。米国政府は昨年8月、債務上限引き上げ法案を可決する代わりに、今後10年間で4兆ドルもの財政赤字の削減を約束、義務づけられたからだ。  このために、米国景気が減速すれば米国金利は低下するだろう。その場合、ドルが下落するため、もう一度円高圧力が強まる可能性がある。現在の円安傾向が持続することを前提に置かないことが賢明である。 【今週の数字】 ビッグマック指数が示す米ドル/円レート 1ドル=76.2円 1ドル=75円台に突入した米ドル/円レート。円高の行きすぎだと騒がれたが、デフレが続く日本経済を踏まえると、実は当然の円高だった。’13年に米国経済が減速すると、再び円高ドル安が加速する可能性がある
ビッグマック指数

ビッグマック指数から各国対米ドルレートの乖離率を算出。スイスフランやブラジルレアルなどは割高だが、逆にインドルピーや中国人民元は割安。日本円を見ると、買われすぎということはない(クリックで拡大)

【植草一秀氏】 シンクタンク主席エコノミスト、大学教授などを経て、現在はスリーネーションズリサーチ㈱代表取締役。ブログ「植草一秀の『知られざる真実』」も人気。近著に『日本の再生』(青志社刊)
『日本の再生』

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