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無洗米、完成まで15年の苦労。水を使わずに米を洗う…“お尻についたガム”が難問を解くヒントに

不可能に挑戦する研究の道

米の研究風景(年代不詳)

 反対の声を押しのけてでも、綺麗な海を取り戻すため研究を始めた雜賀氏だったが、最初は失敗の連続だったという。 「米は一度水で洗って乾燥させると、表面に小さな亀裂が入ってしまう。その米を炊いてみると、ベチャベチャの糊のようになってしまうんですよ。一旦水に接触すると、その後乾燥させても食べられたもんではありませんでした」  それを覆そうと、様々な実験と研究を続け、米に水が吸収される前に瞬間的に洗って瞬間的に乾かす装置をつくった。それを炊いて食べてみると美味しいご飯が炊けたという。しかし……。 「家庭で洗わなくて済むよう、工場で米を洗ってそのとぎ汁は浄化処理設備でキレイにすれば問題ないだろうと考えていました。それを浄化処理業者に相談したところ、『何を言ってるんですか、雜賀さん。浄化処理設備では有機物は分解できても、リンやチッソは処理できませんよ』と言われてしまったんです。汚水処理というのは有機物を分解させて綺麗にするのですが、肌ヌカの成分であるリンやチッソという物質は、そもそも無機物なので分解ができないということでした」  なんと、とぎ汁自体を出してはいけない、つまり水を使えないという大きな壁にぶつかってしまった。

お尻についたガムをヒントに

 水を使わずに米を洗うという無理難題。出口のない真っ暗なトンネルを進むような苦悩の日々を送る雜賀氏を、ちょっとしたトラブルが襲った。 「ある日、私のズボンのお尻の部分にガムがくっついていたことがあったんですよ。それを剥がすのに苦労したんですが、誰かに『別のガムをくっつければ一緒に剥がれる』と聞いたのを思い出し、試してみるとズボンのガムは綺麗に剥がれました。その時、『これは米にも使える!』と思ったんです」  この原理を利用して思い立ったのが、米に付着している肌ヌカを肌ヌカでくっつけて取る方法だった。すぐに、その原理を実現できる装置を製作。その仕組みについて雜賀氏は次のように説明する。 「小さな突起のついた回転する金属の筒を作ります。そこに米を入れて回転させれば、突起に米がぶつかって粘着性のある肌ヌカだけが装置に付着します。さらに回転させることで、装置に付いた肌ヌカが他の米の肌ヌカを絡め取るようにしました」  こうして平成3年(1991年)、ついに「無洗米」が完成。開発を始めて、実に15年の時間が流れていた。
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初めての無洗米の評判やいかに
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