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親を”毒親化”させる社会システムの存在。そして「負の連鎖」が新たな加害者を生み出す<田房永子×えいなか>

社会システムが親の「凶暴性」を増幅させている側面もある

中川:そうです。それに、ワンオペで子育てしている母親がヒステリーを起こしてしまうケースは昔からよく取り上げられますが、そもそも「誰がヒステリーにさせていたのか」を考える必要があると思います。仮に女性が怒り狂うようなことがあったとすれば、それは彼女たちの声をちゃんと聞いてこなかった人たちのせいです。 そうした背景を、ヒステリーという言葉は不可視化してたと思う。根本的に問題の構造を理解できてない上に、無理解な夫など周囲の人間の罪をないものとする、非常に失礼で危険な言葉です。だいたい、キレることをヒステリーと呼ぶなら、その主語は多くの場合、むしろ男性だと思います。怒鳴る、キレる、はむしろ男性に充てられてきた言葉ですよね。 田房:親を加害者側に駆り立ててしまうシステムも明らかに存在していますからね。東京の私立中学受験について、そういう話をよく聞きます。子ども自身が勉強と競争が大好きだから親がついていくように支えていたり、子どものペースに合わせている親がほとんどです。でも中には親が競馬のジョッキーみたいに子供の尻を叩いて走らせている感じのおうちもある。 それは親が単に暴走しているわけじゃなくて、塾業界や教育業界が情報やシステムで親を凶暴化させている面もあると言う人が多いです。 中川:教育虐待をしている親御さんは、GADHAにもたくさんいます。中学受験を強制するのはよくない気がするけど、キャリア的にはいい面もありますよね?と言われるのですが、僕がそのとき明確に伝えていることとしては、「よかれと思ってやらせるのは、やめたほうが良い」ということです。 将来のことは誰にもわからないし、もし子供に恨まれても、ご自身が選んだことなので怒らないでくださいねということも伝えます。いつか子供に「お前があんなことをやらせたせいで、人生がめちゃくちゃになった」と責められた場合、謝罪する覚悟はあるか?ということです。逆に言えば、その覚悟があるならば、やれば良いのだと思います。 田房:煽られることが多いですからね、親の立場だと。加害してるときって、「親ってこういうもんでしょ」みたいな、人から聞いたことを自分に言い聞かせたりしているから。被害者の立場としても、人の言葉を借りるのではなく、自分の知識や言葉を使って、自分自身がどうするかを決めることが大事なのだと思います。 【田房永子】 1978年生まれ、東京都出身。漫画家、コラムニスト。第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。2012年、母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を刊行し、ベストセラーとなる。ebook japanにて『喫茶 行動と人格』を連載中。 【中川瑛(えいなか)】 DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。
DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

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