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パートナーが疲れていそうだったので、休ませたら迷惑そうにされた。それに納得できない夫の言い分とは

 DV・モラハラ加害者が、愛と配慮のある関係を作る力を身につけるための学びのコミュニティ「GADHA」を主宰しているえいなかと申します。コミュニティではさまざまな悩みが共有されるのですが、共通するものがたくさんあります。

パートナーが疲れていそうだったので、休ませたら迷惑そうにされた

喧嘩をするカップル

「相手のためを思ってやったこと」でもニーズを見誤るとただの迷惑行為となる

「パートナーが疲れていそうだったので、『自分が子どもを見ているから、たまには外で気晴らしをしてきたら?』と外出を勧めたんです。でも、せっかく自由時間をプレゼントしてあげたのに、パートナーは何だか浮かない顔で早々に帰ってきて……。少しはリフレッシュしてまた頑張ってくれるかと思っていたのに、ちっともそうじゃなかったんです。疲れてイライラして帰ってくるだけなら、自分の頑張りや気遣いは一体何だったのか」(Cさん)  今回はこのセリフの背景に迫りたいと思います。  Cさんは子育て世代。パートナーと共に2人のお子さん(未就学児)の育児と仕事に奮闘中です。そんな折、パートナーとの関係危機をきっかけにGADHAに参加しました。  GADHAに参加してみて、自分がパートナーに対していかに加害的だった(ケアをしてこなかった)のかに気づいたCさん。  早速パートナーのケアをしようと、自分の仕事の休みの日に、自分から子守りを申し出たそうです。しかし、その結果は冒頭のとおり、残念なものとなってしまいました。  僕は、Cさんにその時のパートナーの様子を聞いてみました。 「確かに、今、思い返してみれば、自分の申し出に対して、それほど嬉しそうな様子ではなかったような気がします……。せっかく自由時間をプレゼントしてあげようと提案していたのに、自分の期待とパートナーの実際の反応が違って、がっかりしたのを覚えています」と、Cさんは答えてくれました。

「良かれと思って」気遣ったことが相手の負担に

 そこで、僕は重ねて聞いてみました。 「『自由時間のプレゼント』は誰のニーズですか?Cさんのパートナーは、本当にそれを望んでいたのでしょうか?」  すると、Cさんは少し驚いた様子で、次のように答えてくれました。 「え……。育児のしんどさって、自分の時間が持てないことなんじゃないですか? 自分も、自分の時間が持てないのはストレスなので、なるほどと共感・納得していたのですが……。確かに、雑誌の記事や知人の話に出てきただけで、自分のパートナーに明確に確認したわけじゃないですけど……」  どうやらCさんは、自分がたまたま目にした雑誌の記事や知人の話などから、自分のパートナーのニーズを「勝手にわかったつもり」になってしまっていたようです。確かに、そうした情報通りのニーズがある人は多いのかもしれませんが、Cさんのパートナーのニーズも必ずしもその通りであるとは限りません。  そもそも人の価値観や感じ方などは多様であり、どんなに似た者夫婦であったとしても、自分の価値観や感じ方などとは一致しないことの方が多いはずです。また、Cさんの普段からの育児などへの関わり方や役割分担、体調など、様々な状況やタイミングなどによっても刻々とニーズが変わっている可能性も十分にあります。  そのため、どんなにCさんがパートナーのことを考えて提案していたとしても、パートナーがそれを望んでいなければ、残念ながらパートナーのケアにはならないのです。
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「自由な時間を持てることが嬉しかったので、相手もそうだと思った」
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DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

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