更新日:2023年09月28日 16:41
スポーツ

日本代表が“いいラグビーができた”のに勝てなかった理由…サモア代表戦で求められる2つのポイント

「キック戦略を成功させるカギ」はミスの軽減

ラグビーワールドカップ イングランド戦

サモア戦ではキックがポイントになる ©Kaori Matsumoto

 もうひとつのフォーカスポイントには、キックが挙げられる。  これも相手を自陣に招かないためのツールのひとつだからだ。ボールを前に投げられないラグビーにあって、キックは一発で陣地を獲得できる唯一のプレー。いかに長い距離のキックを蹴れるかと同時に、いかに相手のいない場所へ蹴れるかが肝だ。そのプレーだけを切り取れば、考え方はテニスや卓球に似ている。  まずは横一線に並ぶ防御の死角へキックを放ち、複数人が列をなして弾道を追う。背走して捕球する相手に圧をかけて球を奪い返したり、相手が苦し紛れに蹴り返したボールを受けて得意の連続攻撃を仕掛けたりする。これがベストシナリオといえよう。  実は前回の敗戦時も、キックの戦略自体は奏功していた。それどころかリーチの退場を受け、ボール保持の時間を増やすべくキックの数を減らしてからも、多くのチャンスを作っていた。それでも敗れたのは、攻め込んでからの落球がかさんだからだ。要所でのエラーに泣く傾向は、17日のイングランド代表戦まで続いてしまっている。  司令塔の松田力也は、選手がミスをしてしまうときの心理を分析。反省を忘れない。 「(大きく走れそうな)コースが開いてしまうと、そちらに目が行ってしまい集中するところのポイントがずれる。まずは、しっかりボールを捕る。細かいところですが、そういうところから(見直したい)」  予選プール全体を見て堀江が「ハングリーに」と一戦必勝を誓うように、試合中でも「しっかりボールを捕る」といったその瞬間のタスクに集中する。  丁寧に作戦を遂行し、理想の結果をつかみたい。 <TEXT/ラグビーライター 向風見也>
1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年にラグビーライターとなり「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」「REAL SPORTS」「THE DIGEST」「Yahoo! ニュース」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。ワールドカップ期間中は現地情報をオンラインで届ける「ラグビー反省会特別編」を実施。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など
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