更新日:2023年10月19日 16:52
スポーツ

“優勝”を目指していたラグビー日本代表はなぜ勝てなかったのか。背景には2つの「厳しい条件」が

 ラグビー日本代表は2大会連続での決勝トーナメント進出を懸けて、プール最終戦となるアルゼンチン代表との一戦に挑んだが惜敗。さらに強くなるために、そして優勝を実現させるためには、これから何が必要になってくるのだろうか——。
齋藤直人

要所での失点を悔やんだ齋藤直人

「流れをつかみ損ねた」日本代表

 ラグビー日本代表は10月8日にナントのスタッド・ド・ラ・ボージョワールで、ラグビーワールドカップフランス大会のプールD最終戦に挑んだ。  強い日差し。濃い水色の空。対するアルゼンチン代表のファンのまるでがなっているような歌声のもと、後半16分に日本代表は相手の虚をつくドロップゴール、同25分には速攻からの連係攻撃で加点。終始ミスの多かったアルゼンチン代表に、十分なプレッシャーを与えたかに映った。  しかし実際には、その2つの得点シーンの直後、それぞれに日本代表はピンチを迎えている。得点した直後の失点を繰り返し、流れをつかみ損ねたのだ。

アルゼンチン代表の狡猾なプレーが勝敗を分ける

 ラグビーでは得点が決まると、失点したチームのキックオフでリスタートする。得点されたほうが陣地を取れることが、前に球を投げられないこのスポーツの競争力を高める。キックオフされた球を受け取るほうは、正確な捕球から手早く陣地挽回をしたい。  ところが日本代表は件の得点後、キックオフしたアルゼンチン代表に後手を踏まされている。  レメキ ロマノ ラヴァによるドロップゴールの直後のキックオフは、人員の薄い中央付近へ球が飛んできた。  キャッチに回ったナンバーエイトの姫野和樹が落球し、いきなり自陣22メートル線付近で相手ボールのスクラムになった。しかも、そのスクラムで反則を犯したうえ、サインプレーから左端を破られて失点。2点あったビハインドをさらに広げられて20-29となった。  日本代表がトライ、コンバージョンゴールを決めた直後の同28分にも、アルゼンチン代表はキックオフで真ん中近くを狙った。  今度は日本代表が捕球も、その後に蹴り返したボールをアルゼンチン代表に首尾よくカバーされた。そして、連続攻撃から突進、突破を重ねられた末にタックルミスを引き起こして、アルゼンチン代表に27-36と勝ち越しを許した。
次のページ
アルゼンチン代表は「はっきりと強かった」
1
2
3
4
1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年にラグビーライターとなり「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」「REAL SPORTS」「THE DIGEST」「Yahoo! ニュース」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。ワールドカップ期間中は現地情報をオンラインで届ける「ラグビー反省会特別編」を実施。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など
記事一覧へ
おすすめ記事