更新日:2023年10月04日 17:38
仕事

父子家庭、介護職から銀座ホステスに「経済的に恵まれていた同級生が羨ましかった」

父子家庭で学校のイベントごとが嫌に

――経済的なこともあるとはいえ、かなり厳しいお父様だったんですね。 あい:そうですね。運転免許も自分でお金を貯めて取りましたから。門限も厳しかったし、たまにケンカすることもあったんですけど、親子仲は良かったので、すぐに仲直りしました。 ――父子家庭は珍しいと思うんですけど、辛かったことはありましたか。 あい:運動会や参観日って、大体お母さんが見に来るじゃないですか。でも、うちは父なので、小さいときは学校のイベント事が嫌でした。あと辛かったわけではないのですが、父は料理が苦手だったので、外食が多かったんです。でも体が弱かったので、体に優しいものを食べないといけなくなって、自然と私が料理を作るようになりました。 ――介護の仕事を選んだのは、そういう家庭環境も影響したのでしょうか。 あい:それも多少はあったかもしれません。私が就職した後に、父が心筋梗塞で突然倒れて。結果的にがんで、見つかったときにはステージ3Bで末期の1個手前。大きな手術もしたんですけど、余命宣告を受けて。父と話し合って残りの時間は終末期医療で抗がん剤は使用せずに、モルヒネで痛みを和らげて。結果的に亡くなったのは余命宣告よりも半年ぐらい早かったんですけど、その期間も介護職をしていたのは役立ちました。

本当は父の介護に専念したかった

――仕事もプライベートも介護という生活は、心が休まる暇もなかったのでは? あい:父も病院にいるのが嫌で、イライラして私に当たることもあったんですけど、老人ホームの利用者さんからも、日常的に「もう死にたい」とか「毎日孤独だ」とか聞くんです。その姿が父とも重なって、同じ気持ちなのかなと共感してあげられる部分のほうが大きかったです。本当は父の介護に専念したかったんですけど、生活もあるので、仕事しながらの介護になってしまって。ただ父が亡くなった日は、午前6時から午後3時まで働いて、そのまま父の入院する病院に行って、2時間ほど一緒に過ごすことができたのは良かったです。 ――早くから長女として家庭を切り盛りした経験は今にも活きているのではないでしょうか。 あい:そうですね。学生時代は経済的に恵まれていた同級生が羨ましかったですし、「どうして自分だけ……」と思うこともありました。でも、もっと過酷な環境で育っている方もいらっしゃいますし、父が厳しくしてくれたおかげで、何事も自分でやることの大切さ、我慢強さ、自立心が育まれました。父が亡くなったのは私が21歳のときで、人生のどん底だったんですけど、それを乗り越えて来たから多少のことではへこたれないというか。もちろん辛いこともあるし、将来が不安になることもあるんですけど、なんとかなるという精神でポジティブに考えるように努めています。 ――お話を聞いていると献身性も高いですよね。 あい:介護職のときは障害者と高齢者の両方を経験したので、たとえば障害者の方だったら、「私がこの子だったらどう思うんだろうな」と相手のことを考えられたり、「歩けるだけでも幸せだな」と小さいことにも感謝できたりはあるかもしれません。
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出版社勤務を経て、フリーの編集・ライターに。雑誌・WEB媒体で、映画・ドラマ・音楽・声優・お笑いなどのインタビュー記事を中心に執筆。芸能・エンタメ系のサイトやアイドル誌の編集も務める。

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