仕事

「経費精算の時間が3倍かかる」インボイス制度にサラリーマンからも悲鳴。経理やSEは残業続きで地獄絵図

経費を使う際にも配慮が必要に……

『地獄のインボイス制度狂騒曲』』集会

9月25日に行われた、制度中止を求める集会。野党幹部の姿も(STOP! インボイス公式YouTubeより)

 税理士の脇田弥輝氏も次のように話す。 「打ち合わせや接待の飲食費、取引先の手土産など会社の経費を使う際には、『今後、インボイスを発行してくれる店舗を利用してください』と言われるようになるでしょう」  実務増加を懸念する声は、数字にも表れている。「インボイス制度を考えるフリーランスの会」が経理実務に携わっている人を対象に行った調査によると、煩雑な業務が増えることによって「異動」もしくは「退職/転職」をしたいと考える経理担当者は33%に上る。  会社の規模別に見ると、「従業員1000人以上の規模」が47.4%と最も高い。大企業であればあるほど、取引先の数や商取引回数が多くなり、インボイス関連業務の激増が予想されるからだ。  一方、支出管理サービスのLayerXの試算によると、インボイス制度施行により、全国で毎月約3413億円の人件費が追加コストとして発生する可能性があるという。  同制度による税収増は年間約2480億円(’19年、政府の国会答弁)と予測されているが、このままでは経済損失のほうが多くなりそうだ。  会社員への影響はまだある。  現在、頭を悩ませているのは、副業をしている会社員だろう。 「SEO関連のライティングの副業を休日にすることで、良いワークライフバランスを築いてきました。でも、夏前くらいに登録の有無を確認されました。年間50万~80万円くらいですが、インボイス登録や帳簿の手間、税負担を考えると、割に合わない。もう副業をやめようかなと思っています」(40代・男性)

廃業を検討する副業会社員が続出

’19年からスタートした働き方改革に伴う法整備で、副業やパラレルキャリアなど柔軟なワークスタイルが浸透しつつある。特にコロナ禍では、本業でリモートワークが導入され、自宅で働く環境が整備され、副業しやすい環境ができたケースも多く、副業をスタートする人も増えた。  キャリアや就転職に関する各種調査を行うJob総研が昨年行った調査によると、会社員のうち21.6%が「副業・兼業をしている」と回答し、60.5%が「したいと思う」と回答。このように副業に関心が高まっている現状があるにもかかわらず、インボイス制度が水を差す格好となった。 「インボイスを欲しいと言ってくるのは、基本的に売り上げが大きい企業です。例えば、個人客を対象に自宅でネイルサロンやお料理教室を開いているような場合は言われることはないでしょう。  しかし、例えば結婚式場と契約してカメラマンをしているような場合だと、インボイスを求められます。どこから発注されているかでインボイスが関係してくるかどうかが変わるのです」(前出の脇田氏)
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ウーバーイーツの配達員たちにも影響があるワケ
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