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明暗分かれた阪神と巨人。原監督の「マシンガン継投」が中継ぎ陣の弱体化を招いた原因か

わずか1球で降板させられた高梨

 今年の阪神戦ではこんなことがあった。  8月10日の東京ドームでの試合で、巨人の鈴木康平が1点ビハインドの9回に登板すると、1死後に木浪聖也にストレートの四球を与えた。岡田監督は続く投手の島本浩也に代えて糸原健斗を起用。直後に原前監督は投手を高梨に交代。すると、岡田監督は代打の代打で原口文仁を起用した。  この場面、高梨としては早めにストライクで追い込んで勝負したいと考えていた一方で、近本の死球の一件で、内角は攻めづらい。そこで初球は内角への厳しいストレートではなく、スライダーを選択。だが、このボールが真ん中付近に投げ込まれると、原口は待っていたかのように振り抜き、打球は左中間スタンドに一直線に飛び込んだ。その結果、この試合を決定づける一打となったのである。  この直後、原前監督がマウンドに向かうと、堀岡隼人に交代。高梨はわずか1球での降板となった。

原監督のやり方では「一人前にならない」のか

 また、9月13日の甲子園球場での試合では、先発した横川凱が3回に2本の安打と四球を与えて無死満塁としたところで松井颯と交代。大山悠輔を三振に打ち取ったものの、続く佐藤輝明に右中間へ満塁弾を打たれ、これが決勝点となって巨人は敗れた。いずれも継投からの被弾である。  かつて1980年のドラフトで原を抽選で引き当て、巨人の監督を通算7年間務めた藤田元司は、現役時代、スター選手だった野手が監督を務めた弊害について、自著でこう語っている。 「投手は監督から早く交代させられると、責任を他へ転嫁させたがるものである。現役時代、打者として活躍した人間は、投手が少しでも調子を崩すと、危なっかしくて見ていられない心境になるのだろうが、これでは投手は育たないのである。  長いペナントレースにおいて、ピンチになったからと言って、そのたびにリリーフを仰ぐようでは、一人前の投手に育たない。またリリーフ投手も他人が招いた苦労を背負わされてばかりいては、やがて疲弊してしまう
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藤田氏が続投の目安にしていたのは…
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スポーツジャーナリスト。高校野球やプロ野球を中心とした取材が多い。雑誌や書籍のほか、「文春オンライン」など多数のネットメディアでも執筆。著書に『コロナに翻弄された甲子園』(双葉社)
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