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明暗分かれた阪神と巨人。原監督の「マシンガン継投」が中継ぎ陣の弱体化を招いた原因か

藤田氏が続投の目安にしていたのは…

 藤田はどんなに塁上に走者を出しても、決して点を与えない投手を評価していた。中継ぎで出てきた投手が1~2回を完璧に抑えてくれるのが理想だが、そう毎回できるものではないと考えていたからこそ、どんなに塁上を賑わせても辛抱強く投げさせ続けた。  もう1つ、藤田が続投の目安にしていたのは、相手チームの選手たちの反応である。打てそうなボールが来るのに、バットを振れば内野ゴロの山を築いて、「あれ? おかしいな?」という表情でベンチに引き上げていく。あるいはいい当たりを打っても野手の正面を突いて、悔し気な表情を浮かべてベンチに戻っていく。 「たとえどんなにバットに当てられていても、相手が打ち込んで点をとるまでにはいたっていないのだから、わざわざ投手を代える必要がない」という結論にいたり、続投させていたというわけだ。  それをせずに、「先手先手を打って継投しているつもりでも失敗するのは、相手チームの反応を見ていないからである。相手が嫌がる投手は誰なのか、この点を見極めていれば継投は難しいものではない」と、藤田は主張している。

課題が山積するなか、阿部新監督はどう動くのか

 あらためて原前監督の投手起用を振り返ると、まさに藤田の指摘しているポイントが当てはまる。中継ぎ陣が疲弊し、脆弱になっていた過程をたどっていくと、藤田のような投手起用を行っていなかったことが原因の1つと考えることもできる。  10月14日、巨人は原前監督に代わって阿部慎之助新監督が新たに始動した。2年連続Bクラスに沈んだ巨人には走攻守ともに課題が山積しているが、中継ぎ投手の強化もその1つに当てはまる。阿部新監督が捕手出身者ならではの観察力や洞察力、分析力などを働かせ、根気よく投手を起用できるのか、今年の阪神との戦いの結果をどう反省して来年につなげていくのか、彼の指導力と采配に注目していきたい。 <TEXT/小山宣宏>
スポーツジャーナリスト。高校野球やプロ野球を中心とした取材が多い。雑誌や書籍のほか、「文春オンライン」など多数のネットメディアでも執筆。著書に『コロナに翻弄された甲子園』(双葉社)
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