DDTじゃなかったら「プロレスラーになってない」
――レスラーでいられるのが残り約1ヶ月。「引退まで自分に注目してほしい」というレスラーもいれば、赤井選手のように「できる限り団体のために、私を利用して」と話す選手もいます。やっぱり赤井選手がDDTが好きだからですか?
赤井:私DDTが好きなんですよ。DDTじゃなかったらプロレスラーになってない。フリーでプロレスをやる気もないですし。DDTだからやってます。
自分の育ちや環境が関係しているかもしれないけど、DDTに“家族”を感じています。嫌なことがあったりムカついたり、口では「世話が焼ける」とか言っても、しっかりとした絆があってDDTが帰る場所になっている。
だから他団体にはDDTを背負って参戦しています。「赤井沙希ちゃんっていう、ちょっと細身で、タレントやっているようなレスラーが怪我した」なんて、絶対思われたくない。だからケガをして這って帰ったこともありました。「DDTをなめんなよ」って思いがあるんです。
――ズバリ、赤井選手にとって“プロレス”とはなんですか?
赤井:一言で表すのは難しいけど、自分にとって「人間力を育ててくれたもの」でしょうか。プロレスラーになる前は、人間力が欠如していましたね(笑)。怒ることもなかったし、人前で泣くこともなかった。だって、タレントとモデルだけやっていて人前で泣くことなんてないじゃないですか。
悲しいことがあったら隠れて泣かなきゃいけないし。ムカついてもグッと堪えるのが大人だし、笑いたくても我慢していました。
――プロレスが赤井選手に喜怒哀楽を教えてくれたのですね。
赤井:そういう意味では、パレットの絵の具の色の種類が増えたなって思います。プロレスを始める前はモノクロの絵しか描けなかったけど、今は「赤井沙希」というキャンバスに色鮮やかに描けるってことかな。
――最後にファンに残したいメッセージをお願いします。
赤井:引退を発表してから、いろいろな感情に惑わされています。でも自分が自分を取り戻せるのはお客さんやファンの声。だから私がレスラーとして燃え尽きるその瞬間まで見届けてほしい。
そしてまだプロレスを観たことのない人がいるのであれば、11月12日の両国国技館に観に来てほしい。そこで推し選手を見つけて、その後もDDTを見続けてくれたら一番嬉しいなと思います。それが私のレスラーとしての最後の願いです。
<取材/大楽聡詞 文/黒澤浩美 撮影/中川菜美>
【赤井沙希】
1987年1月24日生まれ、京都府出身。身長174㎝体重53kgの長身細身と美貌を活かしファッションモデルや女優、タレントとしても幅広く活躍。2013年8月18日DDT両国国技館大会でプロレスデビュー。キャリア10年目の今年、11月12日両国国技館大会で“赤井沙希引退試合スペシャルマッチ”赤井沙希&坂口征夫&岡谷英樹vs丸藤正道&樋口和貞&山下実優戦を最後にプロレス人生に幕を下ろす。
22歳でラジオDJデビュー。その後、ナレーターとしてニュース番組を担当。またスポーツ実況を担当し選手個人に興味を抱きスポーツライターとして活動を開始。その他、司会やアニメーター等、様々な活動を続けている
11月12日両国国技館で赤井沙希選手の引退試合が開催。同門イラプションのメンバー坂口征夫&岡谷英樹とタッグを結成。元イラプションの樋口和貞、同期で東京女子プロレスの山下実優、そして“方舟の天才”プロレスリング・ノアの丸藤正道と対戦する。
詳しくは
DDTプロレスリングのWEBサイトをご覧ください。