リストカットは「死ぬためではなく生きるため」。700件以上の“傷跡治療”を行った医師の真意
自殺行為と混同されがちな自傷行為(リストカット)。しかし、これまでに700件以上の自傷行為の傷跡治療を行ってきた「きずときずあとのクリニック豊洲院」院長の村松英之さんは「自傷行為は『死ぬため』ではなく、『生きるため』の行為である」と言う。
――傷と傷跡のケアに特化したクリニックを開業しようと思った経緯を教えてください。
村松英之(以下、村松):2000年に形成外科医になって以降、ずっと「形成外科」の認知度が低いことに問題意識を持っていました。例えば、アゴに大きな傷のある女性の患者さんが来られて、傷跡修正手術を受けて傷が目立たなくなり、「ようやく前を向いて人と話せるようになった」と言って非常に喜ばれたことがあります。
その方は私がいる病院に来るまでに、「皮膚科や美容外科など他の診療科の病院にかかっても適切な治療をしてもらえずどこに行けば治療をしてもらえるかも教えてもらえなかった」と。形成外科が知られていないために、患者さんたちが苦労していることに気づいたんです。
皮膚科などでは、傷が治ったら治療は終了します。でも、傷跡が残っていることで生活に支障が出たり、活動が制限されたりするんですね。傷跡で悩んでいる人を何とかしたいという思いで、当院を開業しました。
――自傷行為の傷跡をお持ちの患者さんが来られているそうですね。どのような悩みを抱えた方がいらっしゃいますか。
村松:開業した2017年に自傷行為の傷跡で来られた患者さんは3人でしたが、昨年は254人になり、コロナの影響があった2020年を除いて年々増えている状況です。女性が9割で、20~30代の方が8割ほど。来院の理由としては「人の目が気になる」「半袖を着たい」「仕事に影響する」といった声が多いですね。
「他人からメンヘラ(心の病気を抱えている人)だと見られる」と困っている方もいれば、「傷跡を見た人に不快な思いをさせてしまうのでは」と心配される方も。悩みは人それぞれです。
なぜ生きるために自傷行為を行うのか。村松さんに、その理由や自傷行為の経験者が回復に至るまでの道のりを聞いた。
想定外に増えたリスカ経験患者たち
理由は「半袖を着たい」「仕事に影響する」
大阪府出身。外資系金融機関で広報業務に従事した後に、フリーのライター・編集者として独立。マネー分野を得意としながらも、ライフやエンタメなど幅広く執筆中。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter):@COstyle
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