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「強迫観念を相手にしたらダメ」38歳漫画家が“強迫性障害の治療”でわかった意外なこと

 最近、元お笑いコンビ「プラス・マイナス」の岩橋良昌さんや俳優の佐藤二朗さんらが公表した強迫性障害。厚生労働省の資料によると、生涯の間に100人に1-4人が経験する決してめずらしい病気ではないという。一方で、強迫性障害についてあまり知られていないのが現状だ。
強迫性障害

みやざき明日香『強迫性障害治療日記』(星和書店)

 前編では、強迫性障害に悩む当事者としての経験を著書で伝えている漫画家・みやざき明日香さん(38歳・@miyazaki_aa に、症状を発症した経緯や苦しみと闘う日々を語ってもらった。後編では、みやざきさんに治療によって改善したことや、今もなお抱える悩みを聞いた。

治療に取り組んでも「病気と闘わなくていい」

――著書『強迫性障害治療日記』によると、2018年から強迫性障害の治療に取り組まれたそうですが、どのような変化がありましたか。 みやざき明日香(以下、みやざき):「治したい」という気持ちを持つことが一番大事なのだと分かりました。私は、医師の勧めで「曝露反応妨害法」という認知行動療法に取り組みました。 治療を行っている最中、ついつい強迫観念にとらわれてしまうのですが、「治したい」という一心で続けていました。そのお陰で、一時期に比べて、日常生活を送りやすくなりました。  また、強迫性障害に関する書籍を読み、「強迫性障害の症状は患者が頭の中で作り出しているものだから、病気は存在しない。存在しないものと戦う必要はない」という考え方と出会って気持ちが楽になりました。ネガティブな考えが湧いてきても、できるだけ無視するようにしています。  強迫性障害の患者さんはよく「闘病している」と言うのですが、病気と闘わなくていいんですよ。強迫観念を相手にしたらダメなんです。それが治療によってよくわかりました。

男女共用トイレを利用するのが怖かった

強迫性障害

『強迫性障害です!』より(C)みやざき明日香/星和書店

――コロナ禍で強迫性障害の新規患者が増えたという報道がありましたが、みやざきさんの場合はいかがでしたか。 みやざき:もう最悪でしたよ。(強迫性障害の当事者にとって)病原体的なものは恐怖ですから。私は母が介護の仕事をしており、高齢者と接するので、もし私がコロナに感染して母にうつして、高齢者が亡くなったらどうしようという怖さがありました。なので、手洗いも激しくなりましたし、全体的に症状が悪化しました。 ――症状が悪化してから、どのように社会復帰されたのでしょうか。 みやざき:漫画の連載が終わってから漫画を描く仕事はいったん休憩しようと思い、A型作業所(就労継続支援A型事業所)に通っていました。そこには小さな男女共用のトイレしかなく……。共用のトイレに入るのが怖いので、休憩時間に近所の(女子専用のトイレがある)スーパーまで走って行きました。社会復帰にはそういう壁がありましたね。
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改善しても完治は困難
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大阪府出身。外資系金融機関で広報業務に従事した後に、フリーのライター・編集者として独立。マネー分野を得意としながらも、ライフやエンタメなど幅広く執筆中。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter):@COstyle

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