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リストカットは「死ぬためではなく生きるため」。700件以上の“傷跡治療”を行った医師の真意

強いストレスから自傷行為に

――自傷行為を行われる時期に特徴は見られますか。 村松:自傷行為の時期は、中高生が7割程度で、低年齢化が進んでいます。思春期に人間関係に悩んで行うケースが多いです。親など家族からの心ない言動や行為によって自己肯定感を下げられ、あまりにも強いストレスがかかると、それを和らげたい思いから自傷行為を行うのです。 ――身体の一部を切ることで気持ちが和らぐのでしょうか。 村松:激しい怒りや悲しみ、強いストレスがかかった時に身体を切ることで、スッと楽になる。これは科学的に証明されていることですが、自傷行為を行うことで脳内麻薬が分泌されるのです。その感覚を覚えて、ストレスがかかると再び気持ちを和らげるために同じ行動に出る。自傷行為を行う方のほとんどは、死にたくないから切るんです。「死ぬため」ではなく、「生きるため」に自傷行為を行っています。  あるいは親を亡くしたショックによる強いストレスから自傷行為を行うことで何とか生き延び、その時の記憶を失っている患者さんもいました。自傷行為によって記憶が途切れているんです。時間が経過して親の死が受け入れられるようになった頃に自分の身体が傷だらけなことに驚いて病院に来られました。自傷行為をやめられず精神科に通う方もいらっしゃいますが、ほとんどの方は一定の時期を乗り越えて自傷行為をしない生活に戻られています。

試行錯誤の末に出会った「戻し植皮」治療法

きずときずあと

700件以上のリストカット傷跡治療を行った村松医師

村松:開業当初はレーザー治療をメインで切除や削皮を行なっていました。しかし、「本当にこれで患者さんの悩みを解決できているのかな」という疑問がありました。リストカットの傷跡のある皮膚を削っても、また白い傷跡が見えてしまうこともあり……。  そんななか、戻し植皮という治療方法を見つけて、モニター制度を導入して割引料金で手術を始めていくうちに、「半袖の服を着て外出できるようになった」「傷跡を見られても気にならなくなった」といった声を聞くようになったんです。患者さんたちからポジティブなフィードバックを得て効果を実感し、戻し植皮での治療を増やしていきました。
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リスカ跡の治療は病院に行っても拒否される?
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大阪府出身。外資系金融機関で広報業務に従事した後に、フリーのライター・編集者として独立。マネー分野を得意としながらも、ライフやエンタメなど幅広く執筆中。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter):@COstyle

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