仕事

障害者支援現場の“カスハラ”に悩む介護職のリアル「容姿や人間性まで罵倒された」

「太っている人は汗を垂らすからいやだ」

重度障害者訪問介護事業所

取材に答える小山さん(仮名)

「介護しているのは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)・筋ジストロフィー・脳性麻痺・中途障害の方と幅広いですが、支援内容や技術ではなく、介護士の容姿や体格などを理由にその介護者を拒否する人もいます。私たちはもちろん、障害がある方と接するときに『人』として接するというポジションを取ります。だけど、こちらを差別しているのはむしろ障害当事者なんじゃないかと思うことがあります」  A子さんという新人の介護職員がいた。筋ジストロフィーの利用者さんに、次回からA子さんが支援に入ることを伝えた。そうしたところ「名前、年齢、経験年数、背格好」まで聞かれた。太っている人は汗をかいて、汗が落ちてくるからダメだと言われた。  小山さんは「痩せていても汗をかく人はいますよ」と言ったが、「経験上、太っている人は汗を垂らすからいやだ」と譲らずに、出入りをNGにされたことがあった。

素手で嘔吐物を処理しろと責められたことも

 他にも、脳性麻痺の高齢者男性に「あの人はオカマに違いないから嫌だ」と拒否されたこともあった。その拒否された男性介護職は、少し、中性的な人ではあったが、彼女がいて同棲もしていた。脳性麻痺の利用者さんから「他の人の前で自分はオカマではない」と宣言することを要求され、「自分はこの世界に向いてないのではないか」と精神を病みそうになってしまったという。  ALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性に「秋山さん、こんにちは」と挨拶したら、「今、阿部って言った」と支援拒否されたこともあった。  また、子離れができていない身体障害の利用者の家庭で、利用者が食事後に軽く嘔吐したことがあった。介護職は感染症対策として、グローブとマスクをして嘔吐物を処理する。それを「うちの子が汚いというのか」と素手で処理しないことを責める親もいた。
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事業所内のメンバーで話し合って支援
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立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1

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