仕事

障害者支援現場の“カスハラ”に悩む介護職のリアル「容姿や人間性まで罵倒された」

事業所内のメンバーで話し合って支援

「介護職も同じ人間なのに、障害を持っている人たちやその親が、自分たちを見た目で差別したり人間扱いしてくれなかったりする。そういったことが何度かありました。こういう物言いをするのは、社会との接点が少ないからなのか。それとも重複障害(身体障害だけではなく、知的・発達・精神障害も併発しているのではないかの意)なのか、障害特性なのかなど原因を考えましたが、答えは出ません。だけど、そうやって事業所内のメンバーで話し合うことで、気持ちを落ち着かせ、支援をしています」  もちろんそういった人たちは少数派で、残りの8割の利用者やその家族は、信頼してもらうまでは大変だが、信頼してくれたら人と人との付き合いができる。

なぜ重度障害者の支援を続けるのか

重度障害者訪問介護事業所

福祉事業所の「ハラスメントに関する誓約書」(※今回の取材とは別の事業所)

 小山さんは、そういうスタッフのメンタルの安定のために、コロナ禍でも、なるべくオンラインではなくリアルに会って気持ちを吐き出させたり、共有させたりするようにしている。そうでないと、精神を病んでしまったり、離職したりしてしまうからだ。  そんな思いをしてまで、なぜ重度障害者の支援を続けるのだろうか。 「大変なのでやれる人がいない。だけど、こういう世界を知ってしまったからにはやるしかないという責任感からです。障害者介護の世界は技術よりも信頼関係を得るための、コミュニケーションスキルが必要なため、未経験者も歓迎しています。俺たちは障害者専門職というプライドを持って、信頼を勝ち取ってやると思いながら続けています」  小山さんが話してくれたようなケースは、障害者支援者に取材をすると、よく耳にする。「高卒のあなたはクソだ」と罵倒され傷ついたという女性支援者もいた。ただでさえ、介護する側の人数が少ない中、介護従事者に対してのメンタルケアの仕組み作りは急務だ。 <TEXT/田口ゆう>
立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
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