障害者支援現場の“カスハラ”に悩む介護職のリアル「容姿や人間性まで罵倒された」
2020年(令和2年)6月1日に「労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」が改正された。2022年(令和4年)4月1日より中小企業でも義務化された。
それに伴い、厚生労働省は、介護・福祉事業所にも利用者やその家族からの迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)から職員を守るための体制作りをするよう指針を出した。介護職から障害者や高齢者への虐待などは報道されるが、その逆はほとんど報道されない。
小山さんが介護職を目指したのは、2001年~2002年頃の介護保険法が制定された直後だった。介護保険法の制定で、今後、福祉ジャンルは「食いっぱぐれない」と思った小山さんは、両親の勧めもあり、老人介護の専門学校に通った。小さい頃から近所に住むお祖母ちゃんにお小遣いをねだったり、縁側で話していたりした小山さんは、その延長線上で「お婆さんの介護ならできるだろう」と思った。
しかし、ヘルパー1・2級を取得するときに、初めて特養老人ホームに研修に行き、おじいさんの排泄介助を見て「ヤベーと思った」という。お婆さんのことは想定していたが、同性であるお爺さんの介護は考えていなかったからだ。正直、同性の下半身丸出しの姿を見るのも嫌だった。
それでも、小山さんは「指導を担当してくれた女性がかわいかったから」という理由で、熱心に介護を学び、老人介護を10年続けることになった。
そして、昨年、勤務していた施設の運営方針の変更やキャリアの打ち止めなどの問題にぶつかり、知人に誘われたことをきっかけに、重度の身体障害者を自宅で訪問介護する事業所に転職した。
「どちらも経験してみて分かりましたが、老人介護よりも障害者介護のほうがずっと難しいです」と小山さんはため息をついた。
小山さんの事業所では、主に寝たきりや車いすなどの重度の身体障害者を自宅で介護しているが、介護中に罵倒されるなど、「口撃」に合うことが頻繁にある。それで、心を病んでしまう介護職も多いという。
その実態を、老人向けグループホームで10年働いた後に、重度障害者訪問介護事業所に転職した小山さん(男性・50代・仮名)にうかがった。現在、小山さんは介護職を数人束ねるマネージャーをしている(※プライバシー保護の観点から、匿名での取材です。人名・地名・年齢は実際のものと変えています)。
排泄介助を見て「ヤベー」
「老人介護よりも障害者介護が難しい」
立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
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