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65歳で貯金ゼロ…作家・中村うさぎが直面する老後の不安「生きるためには働くしかない」

ブランド品に今は興味がない

中村:老いて機能が劣化していく自分とどう向き合うかは、お金の有無に関係なく迫られることです。私と同年代の人にとっては現実味を帯びていることだし、若い人にとってもいずれは訪れること。万人にとって切実な課題ですね。 ――年齢とともに欲求は衰えていくものでしょうか。 中村:色恋欲に関しては、願望はあるものの、病気をして以降、ずっとオムツ履いているので諦めました。足も不自由なので、杖をつきながら男とラブホテルに向かう自分を想像すると「ギャグにしかならないわ」と思って(笑)。もっと健康だったら色恋欲も出ていたかもしれませんが。  食については、体力が落ちてエネルギー消費量が減ったので1日1食しか取っていませんが、相変わらず食いしん坊で食欲は盛んです。物欲は、なくなりましたね。昔、買い漁っていたブランド品にも、今は興味がないです。

ゲイの夫と「家族になった」と思った瞬間

――1度離婚を経験して、今の旦那さんとは、一切の性的交渉のない結婚生活を送っているそうですね。どのように家族愛を育んだのでしょうか。 中村:夫はゲイなので最初から恋愛関係がなく、年下なので弟みたいな存在でした。ただ、結婚して間もない頃、夫の病気が判明して「あんたが死ぬ間際になったら、誰に看取ってほしい?」と聞いたんです。夫は香港出身なので、家族に看取ってもらう場合は香港から事前に呼び寄せないといけないから。その時の夫の答えは、「香港のママに看取ってほしい」でした。  結局、そのときの夫は何事もなく病気から回復したのですが、それから10年ほど経ったある日、もう一度、ふと同じ質問をしてみたんです。夫には彼氏がいるので、その彼も呼んでほしいかなと思って。そしたら「最期を看取るのはあんたでいいわ」という答えでした。その時、私自身は、選ばれたことが嬉しくて「これで家族になったのかもしれない」と感じました。  一方、夫が私と「家族になった」と思ったのは、別の時だったようです。彼は、結婚前から私が好き勝手に生きていることを知っていました。なので、私が何かをやらかした時には配偶者として責任を取らなければならないという覚悟を決めて結婚届を出したそう。その後、私が税金を滞納したり、ホスト通いしたりしているのを見て、夫は「この人はこういう生き方しかできない。でも、いつかは息切れするだろうから、その時の帰る場所として家を守り続けることが自分の役目かもしれない」と思っていたそうです。彼にとって「家族になる」とは、「自身と全く違う生き方をしている私を受け入れること」だったんだなと思いました。
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無力な存在になって地に足がついた
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大阪府出身。外資系金融機関で広報業務に従事した後に、フリーのライター・編集者として独立。マネー分野を得意としながらも、ライフやエンタメなど幅広く執筆中。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter):@COstyle

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