“理想の家族”以外には精子提供を制限…「現実に即さない法案」が引き起こす最悪の事態
生殖補助医療に関する規制を検討していた超党派の議連が、昨年3月に提示した法案の修正案を提示した。子どもの出自を知る権利を一部認める一方、公明党の事実婚や女性カップルも含めた精子提供案は各党の理解を得られず、結婚したカップルに限定するとの原案が維持された。(以下、文/山口真由)
アメリカなんて好きじゃない。ぐだぐだと思い悩みたい人間にまずはチャレンジをと迫る国は居心地が悪かった。だがそんな私ですら認めるかの国の美点の一つに家族に関する現実的な割り切りがある。
精子提供をはじめとする生殖補助医療の規制に関し、今般、超党派の議連が提示した修正案は子どもの出自を知る権利を一部認める一方で、精子提供は結婚した夫婦に限定した。つまり、事実婚、同性カップルやシングルにはぴしゃりと扉を閉ざしたのだ。
だが、この国に乱立する不妊治療クリニックは親になりたいという渇望で溢れかえっている。国内での正式な治療を禁じられればそれが国境を超え、またはアングラに潜るのは容易に想像がつくだろう。
そんな見え透いた事実は修正案を提示した議連の会長、13回の体外受精を経てアメリカで卵子提供を受けた野田聖子さんその人に申し上げるまでもない。
家族観に関する議論の噴出を避けて現実と折り合えないこの国で、2人のママの下にもシングルのママの下にも法のはざまに今もこれからも子どもは生まれ続け、不安定なまま放置されるだろう。
「出自知る権利」一部容認。“理想の家族”以外は精子提供を制限した現実に即さない法案
国内での正式な治療を禁じられれば…
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1983年、北海道生まれ。’06年、大学卒業後に財務省入省。法律事務所勤務を経て、ハーバード大学ロースクールに留学。帰国後、東京大学大学院博士課程を修了し、’21年、信州大学特任教授に就任
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