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今でもチーマーが多い印象が…「都会でも田舎でもない」池袋が他の街と比べて“特殊”な理由

新宿・渋谷と並ぶ副都心の一つ、「池袋」。近年では再開発も進み、「住みたい街ランキング」の上位に位置するなど大きな変貌を遂げている。しかし一口に池袋について書かれたものは意外と少ないはずだ。この連載では、そんな池袋を多角的な視点から紐解いていきたい。 都市のことを考えるとき、その都市が舞台となっている作品を見ると、興味深いことがわかる。例えば、2000年代を代表するドラマとして知られる『木更津キャッツアイ』は、なぜ「木更津」という土地を舞台にする必要があったのか。そのドラマに描かれている内容から、逆に「木更津」という都市の特徴が見えてきたりする。 今回は、「ありのまま」の池袋の姿を見るために、池袋が舞台となった作品を考えてみよう。
池袋

画像はイメージです

池袋といえば『池袋ウエストゲートパーク』では?

「池袋」と聞いてぱっと思いつく作品の一つに、石田衣良の小説『池袋ウエストゲートパーク』を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。「池袋のトラブルシューター」と呼ばれる主人公のマコトが、池袋で起こる数々のトラブルを解決していく小説で、2000年には、宮藤官九郎の手によってテレビドラマ化もされた。 この作品のイメージから、「池袋にはチーマーが多い」というイメージを持つ人も多い。私も、職場で「池袋の近くに住んでます」と言ったとき、「池袋って、まだチーマーがたくさんいるの?」と真顔で聞かれたことがある。そのイメージの植え付けは絶大だ。

なぜ池袋を舞台にしたのか

しかし、なぜこの作品の舞台は「池袋」だったのだろうか。 その理由の一つは、この作品に登場する人物が「マイノリティ」や「周縁」に存在する人々であることに関係すると思う。例えば、そこに登場するのは、チーマーやカラーギャング、あるいはアニメオタクや引きこもりなど、いわゆる「一般社会」に存在する「普通の人々」ではないとされる人々だ。かくいう、主人公のマコト自体がフリーターであり、「一般社会」とは少し異なる場所にいる存在である。 とはいえ、彼らは一般社会と完全に繋がりを持たないわけでもない。そのような微妙な立ち位置にいる存在だということがポイントになる。そして、それは実は「池袋」という街の立ち位置とうまく合致するのである。 評論家の宇野常寛は「池袋ウエストゲートパーク」を読み解くヒントが「物語の舞台が渋谷でも新宿でもなく池袋であることに隠されている」と述べ、池袋が「渋谷や新宿のような歴史と文脈をもたず、埼玉県をはじめとする北関東の諸都市にとっての〈市街〉として機能する池袋は、言ってみれば都市でありながらも郊外的な性格を強く持つ奇妙な街――「郊外」的都市だった」と池袋の特徴をまとめている。
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“もうひとつ”の池袋が舞台の作品は…
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ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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