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34歳男性が語った「男らしさから降りていい」という言葉の無責任さ。家族の借金を800万円以上肩代わりしたのに…

交際していた女性との結婚も破綻してしまった

 母親を捨てて、自分だけ幸せになる道はなかったのかという問いには「母は家の問題やお金に弱い面もありますが、ひとり親で苦労して自分を育てたので。今でも恨んではいないです」と。弱者男性は家族への恨みというよりも「愛」に縛られているケースが多い。 弱者男性パンデミック 連載第2回に登場した男性・みさこさんも、母親からのネグレクトに苦しみながら、絶縁には至らなかった。「こんな一面さえなければいい人なのに」と言いたくなるような親族がいることは珍しくないだろう。その絶縁するほどでもない関係性が、家族を道連れにしてしまう。  それでも希望はあった。関口さんの内面を見てくれる女性が、いないわけではなかった。いっとき、関口さんは結婚を見据えて女性とお付き合いしていた。 「相手の親御さんがうんと言わなくて。当然だと思います。せっかく頑張って育てた娘に、金銭的苦労をしてほしいと思うわけがない」

借金地獄の終わりを目前に自身にがんが発覚

 それでも、終わりはある。30代後半になり、関口さんの借金は残りわずかとなった。ところが、無理がたたったのか、胃がんが見つかった。ステージ3だった。取材した当時、関口さんは胃の大半を切除する大がかりな手術を終えたばかりだった。日本には高額療養費制度があり、月に一定額以上の医療費がかかっても、健康保険で負担してもらえる。  ところが、この限度額は年収で変わる。年収1000万円を超えていた関口さんは、約25万円まで自己負担の上限額が上がっていた。しかし、手取りを返済に充ててきた関口さんには、貯金がほとんどない。 弱者男性パンデミック ギリギリのところで関口さんを救ったのは、家系的に自分もいずれがんになるだろうと、少ない手元資金から払い続けていたがん保険だった。もし保険がなかったら、年収1000万円を超えながら、仕事を休んでカードローンでお金を工面する多重債務者に逆戻りする可能性もあった。不幸中の幸いだったと、関口さんは語る。  こういった苦境は、男女問わず訪れる。だが、そこで対処法は変わってくる。
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「自分がもし女性だったら…」
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ライター、経営者。主にキャリアや恋愛について執筆。5000人以上の悩み相談を聞き、弱者男性に関しても記事を寄稿。著書に『弱者男性1500万人時代』(扶桑社新書)『ハピネスエンディング株式会社』(小学館)。X:@10anj10

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データで読み解く“弱者男性国家”ニッポンの現在


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