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34歳男性が語った「男らしさから降りていい」という言葉の無責任さ。家族の借金を800万円以上肩代わりしたのに…

 経済面や健康上の問題を抱えるなどして、社会の網からこぼれ落ちた人々を指す「弱者男性」という言葉。高学歴で高収入……一見、順風満帆なハイスぺ男性でも、さまざまなきっかけで転落する可能性はある。ハイスペがゆえに、周囲からは同情されず、社会保障も受けられない。そんな”隠れ弱者男性”がいるのではないか。

年収500万も借金の返済で消える。近親者によって「弱者男性」に

 弱者男性はなぜ生まれるのか。その起源を調べていくと、常に見え隠れするのは「近親者の問題」だ。たとえば、取材に応じてくれた関口さん(仮名・34歳)は、親族によって弱者へ引きずり下ろされる人生を歩んでいた。 「有名国立大を出て、外資系企業で働きました。それからさらに転職し、今はIT企業でファイナンスを担当しています」  カチッとしたシャツに、メタルフレームのメガネが光る。その姿にふさわしい、キラキラのエリート街道。しかし、その経歴には影の一面がある。関口さんの叔母にあたる人物が、祖父母の資産をすべて引っ張り借金までさせて男に貢いだ末に、男に無理心中で殺害されたのだ。  周りに隠して娘に大金を流した祖母と、亭主関白で家のことなど何も知らない祖父。姉である関口さんの母がそれを知ったときには全てが終わっていた。
弱者男性パンデミック

写真はイメージです(以下同)

「だいたい15歳ごろですね、自分の家の状況を把握したのは。家の借金を返済することになるんだろうなと、ぼんやり思っていました」  関口さんの初年俸は約500万円。平均を大きく上回る額だが、その大半が借金の返済に消えた。

借金返済後に祖父母が病気に。医療費と介護費がかさみ再び借金生活

「さらに祖父母に病気が続きました。がんになったり認知症になったり、最終的には葬儀代も僕が負担しました。借金だけなら終わりが見えるんですが、医療費や介護費は何年続いていくらかかるか、先が見えない。給料では払いきれず、金融機関や友人に何件も借金をしました。それがきっかけで友達から絶縁されたこともありますね」  関口さんは累積で800万円以上の借金を肩代わりしている。手取りの半分以上は借金返済に充てられた。そうした状況で一人暮らしをするわけにもいかず、介護士として働く母親との実家暮らしが続いた。  同期は早々に結婚し、ローンを組んでタワマンや高級住宅地で新生活を営む。かたや、借金返済に追われ、結婚や子供など考えられない日々。周りを羨んだことはないか、という問いかけに対しては、「高級住宅街を見ると、これ全部燃やしたら楽しいだろうな、と思ったことがある」と述懐する。
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家族への愛から関係を絶てずに弱者の道へ
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ライター、経営者。主にキャリアや恋愛について執筆。5000人以上の悩み相談を聞き、弱者男性に関しても記事を寄稿。著書に『弱者男性1500万人時代』(扶桑社新書)『ハピネスエンディング株式会社』(小学館)。X:@10anj10

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データで読み解く“弱者男性国家”ニッポンの現在


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