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報じられたはずの北朝鮮の外国人入国、未再開の謎。ロ朝接近を中国警戒か

理由は金正恩の訪露?

「金正恩(キム・ジョンウン)総書記の9月12日からのロシア訪問に中国政府が反発し、“報復”として中朝出入国についての合意を一方的に反故にした」(遼寧省瀋陽の中国朝鮮族貿易関係者)  中国政府は、ロ朝接近を嫌がっており、軍事・貿易での両国の結びつき強化を警戒している。  中国にとって北朝鮮は、米国を中心とする西側諸国に対する重要な外交カードであり、貴重な道具でもある。北朝鮮の手綱を握るのは、あくまで中国1国でないと、その価値を失いかねないと考えているというのだ。  金正恩・プーチン会談のニュースをウェイボーで検索すると、淡々と事実関係だけを伝える官製メディアの投稿は確認できるも、コメントは、いつも通り多くが削除されていて、一般アカウントでの投稿は規制されているのか確認できない。  中国政府がロ朝関係に神経をとがらせて、情報統制をしていることが見て取れる。  そこで、前出の朝鮮族貿易関係者は、合意を反故にされた北朝鮮側が怒って中国側へリーク。その情報を正しいと思い込み、流してしまったのではないかと推測している。  具体例だと、北朝鮮大使館がCCTVへリークの可能性…といったところか。

中国による北朝鮮への謎の配慮

 その一方で中国は、北朝鮮へ謎の配慮を見せている。  10月9日、拘束していた600人もの脱北者を一斉送還。8月末から始まった強制送還で合計2600人ほどの脱北者が北朝鮮へ送還されたとみられると韓国メディアが報じた。  また、コロナ禍に中国の動画共有サイトへの投稿が急増した中朝国境で撮影された北朝鮮住民の映像など、北朝鮮関連動画がバッサリ消えていることも確認できる(まだまだ大量にあるが)。  いずれも北朝鮮が中国へ要請していたものに応じたのだろう。  この配慮は、2015年11月、金正恩総書記を揶揄する「金三胖(太った3代目金さん)」をNGワードにした中国政府の配慮をほうふつとさせる。  金三胖はその後、何度か一時的な解除が確認されたが、現時点でもNGワード指定されたままになっている。  中国は、北朝鮮に貴重な外貨をもたらす観光再開は認めないが、それ以外の北朝鮮の要請には応じる態度を示すなどアメとムチを使い分けているようだ。  中国が、北朝鮮の貿易だけでなく、入出国も牛耳っている。まさに「生殺与奪は中国にあり」と警告を与えているのではないだろうか。 <取材・文・写真/中野 鷹>
なかのよう●北朝鮮ライター・ジャーナリスト。中朝国境、貿易、北朝鮮旅行、北朝鮮の外国人向けイベントについての情報を発信。東南アジアにおける北朝鮮の動きもウォッチ。北レス訪問が趣味。 Twitter ID @you_nakano2017
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