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“無差別に暴力をふるう”危険なヤンキーが、「あの時は悪かった」と地元の飲み会で謝罪した理由

地元に帰ってくるも、様子がおかしい?

 河原さんの名前も忘れかけた頃、小林さんは思わぬ情報を耳にすることに。 「地元に河原が帰ってきたという話を聞いたんです。マジかよ……って。中学時代からは随分と時が経っていましたが、一気に記憶が蘇って。それはもう震えました」  だが、漏れ聞こえてくる噂は、それまでのものとはどうにも様子が異なる。 「同級生が町に新しく出来た便利屋に家の掃除を依頼したところ、河原がやってきたそうなんです。依頼したのは河原にパシリとしてこき使われていた同級生ですが、掃除をタダで請け負ってくれたらしいんです」  また別の同級生は河原さんと飲み会へ。そこで聞いてきたのはこんな経緯だった。 「開口一番、『あの時は悪かった』と、謝られました。そして、とうとうとこれまでの人生について語り出したんです。女性を薬漬けにして風俗に堕とすとか、老人から生涯かけて蓄えて来た貯金を騙し取るとか……。そうした“ヤクザの仕事”に良心の呵責を感じるようになったそうです。河原はおばあちゃんに育てられた生い立ちもあって、特に老人相手のことには胸が痛んだみたいですね。次第に仕事たる悪事を働けなくなり、上納金も収められず、先輩たちから追い込まれるようになったのだとか

便利屋を始めた理由は…

 現代らしいヤクザ事情なのか、金を積むことで組を抜けられた河原さん。地元で便利屋を始めたのは、背負った借金を返すためだった。 「自分の過去の行いを反省して、当時かかわった人たちに償っていきたいとのことでした。引越し作業も、何日間もの畑仕事も、河原は文句一つ言わず、安価でやり続けているそうです」  なにをやっても過去の行いが消えてなくなるわけではないと、不良の改心にすっかり手厳しくなった昨今。それでも再生を受け入れる余裕が世間に皆無では、アウトローを再生産してしまうばかりだ。  河原さんの便利屋は「どんな依頼も一生懸命にやってくれる」と、レビューサイトの評価も上々。これからも償いの心を決して忘れず、地道に仕事を続けてほしい。 <TEXT/和泉太郎>
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め
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