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たぬかな「弱者男性合コン」でのSNS発言に賛否。発達障害の当事者はどう見るのか

「弱者男性合コン」でたぬかな氏がツイートした内容は当事者会あるある

「弱者合コン自体は、妻がハマっていたので知っていました。いわゆる“めんどうくさい人”“困難事例”といわれる人たちに、個人がボランティアやイベントで対応するにはムリがあります。斜め上の結果でしたが、発達障害の当事者会を主催している人は同じような経験があるはずです」  M氏は「弱者男性」や「弱者女性」を「心が折れているかどうか」で定義している。発達障害当事者で本も執筆している借金玉氏の造語で、発達障害特性が薄い順に並べた「バリ層・ギリ層・ムリ層」という言葉があるが、いわゆる“ムリ層”も同じように考えているという。
借金玉

借金玉氏のツイート

 取材していると「みどる」に限らず、発達障害当事者会の主催者は主に「ギリ層」をターゲットにしていることが多い。若い当事者会主催者は、昔ながらの「コミュ障」で対人関係でトラブルを起こすような「ムリ層」と呼ばれる人たちを受け入れないように、会場をカフェやバーにするといった形で、避けているケースも多い。 「他責・逆恨みをし、被害的な困難事例といわれる人たちを受け入れてしまうと、他の参加者やスタッフの安全・安心が守れなくなります。ギリ層の人たちは、戦場だったら、ライフハックという“武器”があれば戦いたい人たちです。だけど、ムリ層といわれる人たちはもう社会で戦いたくない。彼らに戦える武器がありますよという呼びかけをしても響かない。そういった人たちに当事者会や個人が関わるのは難しいでしょう。差し伸べられた手が助けの手なのか、攻撃する手なのかさえ、見分けがつかない心理状態なので、支援の手さえ振り払います。そういった人たちは、医療・福祉が必要な人たちなのでつなぐこともあります」

“男らしさ”の呪縛で助けを求められない男性たち

 では、当事者会でも排除されがちな「弱者男性」「弱者女性」や「ムリ層」と呼ばれる人たちは、いったいどこで支援を受けられるのだろうか。 「そういった人たちは、支援の受け方が下手なので、差し伸べられた手を振り払ってしまう。特に男性はなかなか“男性らしさ”の問題もあり、女性のように助けを求めることをしません。役所で耳にした話ですが、女性が生活保護なり障害者支援制度の申請に来る時は、男性と一緒にくるそうです。社会的に女性が男性を頼ることのハードルは低い。だけど、男性は“らしさ”に縛られるので、役所の窓口にも1人で来るか、職業的な支援者とくるケースが多いそうです。当事者会からも漏れてしまう層への公的支援が必要だと思っています」  ジェンダー問題から助けを求められない男性は多い。そして、そうした人たちを受け入れる医療・福祉体制は充分ではない。M氏自身も、自分が悩んでいた時期、男友だちにはプライドがあって打ち明けられなかったという。 「バリ層・ギリ層といわれる人たちも、いつ“弱者男性・女性”や“ムリ層”に転落してもおかしくないです。ギリギリ、社会で頑張っていたけれど、二次障害(ムリしたことでうつや適応障害など別の障害・疾患を発症すること)になってしまうケースもあります。心が折れてしまうことには、障害の重さや軽さ、収入や社会的地位は無関係です。ですので、僕は、そうなる前に当事者会で同じような境遇にいる人に相談して欲しいと思います」
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発達障害者への公的支援の現状
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立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1

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