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たぬかな「弱者男性合コン」でのSNS発言に賛否。発達障害の当事者はどう見るのか

「にも包括」と地域包括ケアシステム

発達障害者支援ハンドブック

発達障害者支援ハンドブックを持つM氏

 賛否の声があるが、厚生労働省は「団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現」することを目指している。「地域包括ケアシステム」とは、簡単に書くと「今まで国が病院や老人ホームで世話をしてきた高齢者や障害者を自治体で受け入れて共生してください」という仕組みのことだ。  厚生労働省はさらに「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」も打ち出しており、俗に「にも包括」と呼ばれる。精神障害者や発達障害者も当然、高齢化していく。取って付けたような「精神障害にも」という言葉への反発からこの言葉ができた。 「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」では、M氏が運営しているような当事者会にも「ピアサポーター」としての役割が求められている。M氏は文部科学省や厚生労働省に、成人の当事者に対する支援の強化を訴える組織が必要だと考えている。 「子どもに対する支援は予算面でも充実しています。それは、自分の子どもたちに対して支援をして欲しい親たちの団体がまとまってロビー活動をしているからです。ですが、成人の発達障害者は当事者会を開いたり、いわゆる居場所作りをしたりするだけで、政治的なことにまで興味がありません。行政は成人の当事者のニーズにもっと耳を傾けるべきだと思います」  2025年を目途にした地域包括ケアシステムだが、2023年12月現在、対応できない自治体が悲鳴をあげているのが現状だ。人はいつ事故や病気で障害者になってもおかしくない。発達障害者支援の不十分な現状は決して他人事ではない。 <取材・文/田口ゆう>
立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
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