プロ野球「育成制度」における課題とは。「年齢制限や人数の上限」は検討されるべき
若手選手の発掘や育成を主目的とした「育成選手制度(以下、育成制度)」が2005年から導入されてから、間もなく20年が経とうとしている。巨人で9年連続で60試合に登板した“鉄腕”こと山口鉄也氏、今現在ニューヨーク・メッツで活躍している千賀滉大投手など、育成出身で輝かしい成績を残している選手は多い。裏を返せば、彼らは育成制度がなければプロ野球選手になれていなかった可能性もあり、今後もプロ野球の発展には不可欠な制度と言って良い。
とはいえ、FA移籍に伴う人的補償の対象から外すために特定の選手を一時的に育成選手として契約する“プロテクト外し”が横行するなど、育成制度を本来の趣旨とは異なる使い方をするケースは少なくない。NPB(日本野球機構)の選手会も育成制度の見直しについては声を上げているものの、一向に着手される気配はない。『21世紀プロ野球戦術大全』(イースト・プレス)の著者、野球著作家・ゴジキ氏に、育成制度の問題点、適切な制度設計などを聞いた。
プロテクト外しに対しては「育成制度の本来の目的とは異なるため不適切です」と返すが、「ただ制度を“賢く”利用しているという見方もできます」と一定の理解を示す。
「プロテクト外しを実施している球団は主に巨人で、12球団がやっているかと言うとそうではない。選手会の會沢翼会長も問題点を指摘していますが、正直現状のままでは改善に向かうとは思えません。球界の大物や現役監督といった発言力のある人も一緒に声を上げる必要があります」
怪我をした選手を一旦育成選手として契約して支配下選手の枠を空ける、というのも各球団で見られる動きだ。これに対しては「やはり“育成”と謡っていますから、ベテランが育成選手になることには違和感を覚えます。プロテクト外しにも言えますが、育成選手の年齢制限は検討されるべきです」と所感を述べた。
また、一部の球団が育成選手を大量に獲得する傾向も問題になっている。とりわけ、2023年において巨人は39選手、ソフトバンクは53選手と群を抜く数だ。最も少ない阪神(5選手)と比較するとその差は歴然。支配下選手登録の上限は70人に限られており、巨人やソフトバンクではその枠を30人以上と争わなければいけない。
こうした青田買いは選手を飼い殺しているように思えるが、「巨人やソフトバンクは3軍を設けており、施設もコーチ陣も充実しています。とはいえ、大量に選手を獲得しては十分な指導はできないため、人数の上限を設けることが必要になるでしょう。加えて、メリハリをつけるため、在籍年数も決めなければいけません」と持論を展開。
「当たり前ですが、能力の高い選手は支配下でドラフト指名されます。その一方で、育成選手は一芸に秀でた、何か光るものを持っている選手を獲得する傾向があり、今後もそのような指名をされるべきです。例えば山口鉄也氏の場合は怪我をしにくい、ソフトバンクの周東佑京選手やロッテの和田康士朗選手は足の速さなど、活躍している育成選手には明確な魅力があります。ただ、球界のエースに成りあがった千賀投手は例外中の例外。『千賀投手のように先発ローテーションに入って活躍するかも』という期待を抱き、“とりあえず指名する”ということは避けるべきです」
「育成選手の年齢制限」は検討されるべき
千賀は「例外中の例外」
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