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“写真館は儲かる”神話が崩壊か。業界トップの「スタジオアリス」が苦戦する理由

成人式の撮影プランは成功するのか?

 ただし、起死回生のチャンスがあります。それが成人式需要の取り込み。成人式の振袖レンタルと前撮りをセットにした「ふりホ」に注力しているのです。税抜き価格で10万円を切る格安サービスです。  スタジオアリスは、七五三に収益が偏重していることが経営課題の一つ。閑散期の写真スタジオの稼働を上げる必要があります。  衣装の製造も内製化しているため、製造ラインの稼働率を上げることで生産効率の向上を図ることができます。成人式の需要を取り込むことができれば、売上成長だけでなく、閑散期解消による従業員のモチベーション維持、製造コスト削減など、スタジオアリスの経営が良好なものになる条件がそろっているのです。  しかし、「ふりホ」が顧客を開拓するのは長い時間がかかる可能性があります。スタジオアリスには、子供向けの写真スタジオというイメージが染みついているためです。

子育て世代からの認知は圧倒的だが…

 子育てメディアなどを運営するコズレは、子育て世帯の写真館に対する意識調査(「子育て層における写真館利用 市場調査2023株式会社コズレ)」)を行っています。その調査において、スタジオアリスの認知度は90%。スタジオマリオの60%程度と比較すると、圧倒的な差をつけています。  しかし、スタジオアリスにとって、これは諸刃の剣。子供のための写真館という消費者意識から抜け出すのが難しいためです。「ふりホ」に特化した別ブランドや写真館を立ち上げようにも、スタジオアリスの閑散期を解消するという当初の目的が果たされないため、その手が使えません。  昔ながらの写真館は、家族や子供の成長に寄り添ってリピート利用を促すものでした。スタジオアリスは子供の七五三というイベントに特化し、その部分を切り取って成功をつかんだ会社。そこからのビジネスモデルの転換に苦心しています。
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「終活」に向けた写真需要が旺盛に
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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