更新日:2024年02月05日 20:05
スポーツ

「アジアをなめるな」左サイドの南野、浅野・前田の起用…なぜイラク戦は“消化不良”で終わったのか

 AFCアジアカップに参戦中のサッカー日本代表は、19日にイラク代表と対戦して1-2で敗れた。FIFAワールドカップ カタール2022以後1試合平均4得点近くを記録して10連勝中だったが、グループリーグで黒星をつけられた。同大会で優勝を目指す日本代表に暗雲が漂い始めた。  まず大前提として、イラク代表の出来は素晴らしかった。日本代表に立ち向かうイラク代表を見て、ワールドカップでドイツ代表やスペイン代表に勝利した日本代表の姿を想起した人も多いのではないだろうか。粘り強く高い集中力の保持、ボールを扱うテクニック、最後まであきらめない体を張ったプレーと走力、まさに心技体が洗練された状態だった。
伊東純也

イラク代表戦の後半途中から左サイドでプレイした伊東純也

日本の“得意な戦術”が機能しなかった

 それに対して日本代表は集中力に欠けたプレー、コンディションが心配になるようなミスが多かった。それぞれは大きなものではなかったが、それが続いたり積み重なったりして失点を招いてしまった。具体的にはポジショニングのずれやマークの受け渡しといったミスだ。  加えて、相手は対戦相手をリスペクトして研究に研究を重ねていたようで、日本代表が嫌がることを徹底してきた。そのひとつが素早く前線へロングボールを送ることだった。その対応としては、前線からのプレスでロングボールを蹴らせないという守備が対策のひとつとして考えられる。  そもそも「いい守備からいい攻撃へ」を標榜する日本代表が得意とする戦術なのだが、それがあまり機能しなかった。なぜなら、イラク代表がロングボールを送り込んだシーンのほとんどがセットプレーからであって、日本代表はプレスのかけようがなかった。また、ロングボールに加えて、スローインにおいてもロングスローで陣地回復に努めたイラク代表の戦術を前に、日本代表がボールを奪取できる位置は必然的に自陣が多くなり、得意のショートカウンターを封じられてしまった。

左サイドに「南野拓実を起用した」意図は…

 それゆえに、日本代表は相手の守備陣形が整った状態からゴールを狙わなければならない状況に追い込まれた。戦前は5バックが予想されたイラク代表だったが、ふたを開けてみると最終ラインは4人で4-2-3-1の布陣だった。  5バックも想定してチームの強味である右サイドの伊東純也による個人技で崩し、クロスボールからシュートを狙おうという意図は感じられた。そのクロスに合わせる人数を多くしようと左サイドに南野拓実を起用した意図も理解できる。  ただ、南野を左サイドで起用した場合は、中央よりのポジショニングになることは誰もがわかっている。周囲がポジショニングにもっと気を使うべきだった。南野、浅野拓磨、久保建英、守田英正は動きが重なる部分もあり、いつもの連動性は失われた。中央での重なりを軽減するためにもチームとして横幅を広く使うべきなのだが、伊藤洋輝は空いた左サイドのスペースを有効に使えていなかった。もっと前にポジショニングし、相手のサイドバックを引き出せるようなプレーができれば、4バックで対応した相手を崩す回数は格段に上がったはずだ。
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選手交代で状況が好転するも…
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スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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