更新日:2024年02月05日 20:05
スポーツ

「アジアをなめるな」左サイドの南野、浅野・前田の起用…なぜイラク戦は“消化不良”で終わったのか

選手交代で状況が好転するも…

 個々の対応について言及したが、これはチームとしての対応が求められることだ。仮に、指摘したように伊藤がさらに高い位置取りをしたとすると、ボールを奪われたときのリスクマネージメントとして谷口彰悟や守田のポジショニングに大きく影響を及ぼす。総じると、状況に応じてチームがどうすべきかという全体的な判断に欠けた結果といえる。  後半に入り左に伊東、中央に南野、右に久保を配置し直したことで横幅をうまく使えるようになり、連係・連動性も高まっていった。さらに、上田綺世と堂安律を投入して活性化。相手の4バックに対して数的優位な状況をつくり出してゴールに近づいていった。  しかし、イラク代表の対応は迅速だった。すぐに選手を交代させて5バックに変更し、日本代表に数的優位な状況をつくらせないようにした。このような状況下になったときこそ、個人で打開する力を持っている選手が必要になると思うのだが、森保一監督はこの試合で多くのクロスを供給していた伊東に代えて前田大然を投入。同時に、守田と旗手怜央を交代させた。

なぜ「浅野と前田」を起用したのか

 そもそも、この試合においての選手起用には疑問符がつく。おそらく前線からの積極的なプレッシングを狙って浅野を起用したのだろうが、上述のとおりイラク代表の巧みな戦術により狙いどおり実行できなくなってしまった。  加えて、早い時間に先制されたことで得点が必要となった日本代表にとっては、実行できない戦前の戦術にこだわることなく得点力の高い選手を早めに投入すべきだった。この試合での浅野の記録はシュート1本である。前半は16本のクロスが供給されたにもかかわらずだ。  さらに攻撃的な起用でいえば、伊東と前田の交代にも疑問符がつく。前半も後半も伊東がいるサイドからチャンスを構築していた。そして、交代時の状況は個の打開力を必要としていた。伊東を交代させるとしても、それは前田ではなく中村敬斗にすべきだった。個の打開力を持つうえに、得点力も現状の日本代表においてはナンバーワンの選手である。前田は2023年の日本代表において決定力は100%ではあるが、1年間でのシュート数は1本にとどまっている。それよりも1試合平均で2点以上と調子が上々な中村のほうがゴールに近づいたように感じる。
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「不調の菅原」を交代させるべきだったのでは?
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スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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