（ちくまプリマ―文庫） 　語彙力というと、思考と関係ないように思えるかもしれません。確かに、言葉を覚えるだけでは思考とは言えないでしょう。 　本書は、ただ語彙を増やすことを目的とした単語集ではありません。そうではなくて、自分が知っていると思い込んでいる言葉への理解を深め、応用性を高めることを目的としています。 　すなわち、言葉について深く考える。これこそが、この本のねらいです。 　知っているように思えて、実は深く知らない言葉は数多くあります。例えば、みなさんは「率」という言葉が何を表しているか、ご存じでしょうか？　「率」がつく言葉は数多くありますが、それらは一体どんな要素が共通しているのでしょうか。 　打率、確率、勝率、円周率……様々ある言葉を、我々は、「なんとなく」でわかったつもりになっています。しかし、そのような態度では、応用性がない。各語彙を一対一対応で覚えているようなもので、未知の語彙に対して対応することは困難です。 　語彙力こそ、思考力が問われる。斬新な視点ですが、理に適っています。言葉の知識に自信がない方は、ぜひお手に取ってみてください。 　今回ご紹介した3冊は、どれも現代人にとって不可欠な思考力を鍛えるために有用な本でした。持論ですが、何かを鍛えるためには、自分よりも優れた人に師事することが一番の近道でしょう。そういった意味で、現代に生きる（生きた）知の巨人たちに教えを請い、その思考法の一端を知ることは、何よりも近道にあたります。知力も思考力も積み重ねです。今日ご紹介した本から、第一歩を踏み出されてはいかがでしょうか。 1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。（Xアカウント:@Temma_Fusegawa）