更新日:2024年02月08日 15:00
スポーツ

森保監督は“なぜ久保を交代させたのか”「戦況を読み対応する力」が不足する日本代表に漂う暗雲

“日本代表が目指す形”を逆にやられてしまった

 ロングボールに加えてロングスローも駆使して押し込んできたイラン代表に同点とされてしまうのだが、イラン代表ははじめから後半勝負を狙っていたのかもしれない。前半を見て後半の狙いどころを板倉と毎熊の間に定めたのか、それ以前から決めていたのかは不明だが、ターゲットを定めて戦術を変更したうえ前線からのプレッシングを強めるなど、イラン代表は後半に入って個々がギアを上げてきた。そして、日本代表は相手ゴール近くでボールを奪ってゴールへとつなげるという自身が目指すような形を、逆にイラン代表にやられてしまい同点を許すことになった。  それでも前半に活躍していた前田や久保が引き続き効果的な働きを見せ、相手に押し込まれていた展開からペースを取り戻そうとしていた。その矢先に行われたのが、前田と久保の交代である。代わって三笘薫と南野拓実が出場したがペースを取り戻すことはできなかった。  そしてアディショナルタイムにPKで逆転されて負けてしまうのだが、そのPKとなった場面では板倉がボールの軌道を見誤ったことと、板倉と冨安健洋が重なってしまったことがピックアップされている。しかし、その直前に毎熊がクロスを競り合った場面では、さらに右外で6番サイード・エザトラヒが待ち受けていた。ロングスローの対応でポジションを乱された流れで難しい局面ではあったものの、右サイドのマークのずれが失点の遠因となったのは確かである。

大会を通じて、交代策に疑問符がつく

 結果論ではあるが、交代策が誤っていたことがいえる。まず着手すべきは右サイドの板倉と毎熊間の守備であった。あからさまに不調な板倉を代えるという手も考えられたが、人が代わるだけでイラン代表の流動的な動きを抑えられたとは考えづらい。個人的には3バックにして、右サイドの局面で数的不利になる状況をつくらせないようにすべきだったと考える。そのためにバーレーン戦で3バックを試したのだと推測していたのだが、こうなるとバーレーン戦での交代にもケチがつく。  振り返ると、今大会は交代の采配に疑問符がつくことが多い。先に挙げたバーレーン戦では戦況的に不必要な3バックへの変更もそうだが、イラク戦では冨安のコンディション確認のために不必要な交代を行った。グループリーグ全体でいえばターンオーバー制を導入してGK以外の全選手を出場させたが、最後まで勝ち上がれなかったうえに決勝トーナメントになってもコンディションに不安を感じる選手が存在していた。  推測の域を出ないが、森保監督は試合前に決めた交代しか行っていないのではないだろうか。そう疑わずにいられない。
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監督やコーチにも求められる「戦況を読み対応する力」
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スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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