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貧困家庭から東大合格「塾通いは認められず、参考書を買うカネもない」

東大生の半数以上が世帯年収950万円以上

東大日本最難関クラスの大学である東京大学。通う学生の多くは、幼少から塾通いをして名門中高を通ってきた、いわゆる「エリート」たちです。 2021年度に実施された学生生活実態調査の世帯年収の欄によれば、1,510名の回答者のうち、世帯年収950万円以上と回答した家庭の割合は、約53%でした(「わからない」と回答した方を除く)。東大に通う全学生のうち、半数以上が世帯年収950万円以上の家庭出身であると考えられるデータは、「東大生エリート説」を強力に後押しする証拠であるように思えます。 ですが、必ずしも東大生は裕福な家庭で育てられたエリートばかりではありません。貧しい家庭から苦学の末に合格した学生たちも存在しています。 私は、独自に現役東大生、東大卒業生100人を対象として、幼少からの学びの環境についてアンケートを実施しました。そして、今年の2月20日に、そのアンケート結果を分析し、そこから考察できる内容をまとめた『東大合格はいくらで買えるか?』を上梓します。ここでは、貧困家庭から東大に合格した、「普通の東大生」らしからぬ「リアルな東大生」の姿をお届けします。

東大とは縁がない家庭環境

今回お話を伺うのは現役東大2年生の菅井直哉さん(仮名)です。菅井さんは、東大生としては珍しく、塾も通わず、参考書の一冊を買うにもためらうほどに貧しい家庭出身ですが、自学自習を突き詰めて東大に現役合格されました。菅井さんの学習術に迫ります。 「私は偏差値60程度の県内公立高校の出身です。出身校からは、東大が数年に一人程度出るか出ないか。先生からも期待されていたわけではなく、後押ししてくれた先生は本当にわずか。また、親族はほぼ高卒で、大卒のほうが珍しいくらいの家庭環境でした。東大とは全く縁がなかったんです」 東大に合格するためには、東大に行く方法を知ることが最低条件。そのためには、毎年コンスタントに東大生を輩出している学校や塾に通って、方法論を学ぶことが必要です。しかし、菅井さんの通っていた学校は、この条件にあてはまりませんでした。 中学生の時に、塾に通いたかったという菅井さん。ですが、家の金銭事情が悪いからと反対されてしまったそうです。それでは代わりにと参考書が欲しくなっても、親になかなか言い出しにくい。彼は「ほしい参考書」ではなく「安い参考書」を買って、代用品にしていました。 お金がないと、環境が整わない。環境が整わないと、東大の情報が入ってこない。だから、彼は勉強の時間を削って、東大受験の必須情報を調査せざるを得ませんでした。一刻一秒を争う受験戦争の世界で、勉強以外に時間を割かねばならないストレス。ほかの受験生は、彼が調べ物をしている間にも先へと進んでいます。 「もっとお金があれば、もっと楽に東大受験ができたと思う」と語る菅井さんの姿に、やるせなさがにじみ出ていました。彼は東大に現役合格していますが、そこにはお金で代用できない彼なりの戦いと苦しみがあったはずです。

『東大合格はいくらで買えるか?』(星海社新書)

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独学だけで東大に合格した勉強術
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