育児・介護休業法が昨年2023年4月に改正され、“男性労働者の育児休業(以下、育休)などの取得状況”について、従業員が1,000人を超える企業の事業主に年1回の公表を義務付けた。こういった背景も後押しし、今後は育休を取得する男性も増えるかもしれない。
参照:厚生労働省 都道府県労働局「
事業主の皆さまへ」
いちばんの不安は「やっぱり、お金」
写真はイメージです(以下同)
妻A子(30代)さんから「育休を取ってほしい」とお願いされ、部署内では初の男性育休を取得した
高木陸斗さん(仮名・30代)は、多くの喜びと戸惑いを体験したという。出版社の編集部に所属する高木さんに詳しく話を聞いた。
「それまでは、育休を取ろうと考えたことはなかったです。ただ、妻に頼まれたあとは、自分から積極的に育休制度の仕組みについて調べるようになりました。そして、世間的にも男性が育休を取ることに対して理解が進んでいると知り、上司に相談した感じです」
上司や職場の理解もあり育休を取得する決意を固めた高木さんだが、お金に対する不安は大きかった。政府は昨年2023年3月、産後の一定期間に男女で育休を取得した場合の給付率を
手取り10割に引き上げる案を検討中と発表したが、2024年4月現在は現行どおり。
「育休中は、“
休業開始前の1日あたりの賃金×67%(181日目からは50%)×日数”しかもらえなくなります。いつも支払っている税金はかからなくなるので、給料の大体70~80%もらえる計算にはなるのですが、20~30%は月々の収入が減ってしまいます」
参考:Yahoo!くらし「
育児休業給付金(育休手当)」
妻A子さんは妊娠前にはフリーランスとして独立していたが、体調の変化などもあり、専業主婦に近い状態だった。高木さんの給料のみで家計をやり繰りしなければならない状況にもかかわらず、育休を取るとボーナスに影響する職場だったことも、不安に輪をかけた。
「子どもが産まれると、ミルク代やオムツ代など必要となる費用が増えます。ほかにも細々した出費が出てくるので、主に家計の収入を得ている人が育休を取得する場合は、ある程度の貯金をしておくべきだと痛感しました。計画的に育休を取ることが大切だと思います」
金銭的な不安はあったが、上司や職場が育休に理解を示してくれたこともあり、休職への不安は少なかったとか。高木さん自身も、担当している各ライターの案件や傾向、注意ポイントなどの申し送り事項を細かくまとめ、スムーズに引継ぎができるよう配慮している。
「編集者はライターさんとの相性が大切なので、引継ぎや育休明けのときには細心の注意を払いました。これも、職場の理解があったからこそスムーズにできましたし、時代もよかったと思います。
嫌な顔をされたり、逆に気を遣われたりもなかったです」
ただ、編集という仕事ならではのアクシデントが発生し、「育休前に編集作業をした本の出版記念イベントが、育休中に開催されることになったのです。育休中なので仕事はできない。でも、一個人としては出席したい…」という状況に追い込まれてしまう。
「結果、“お客さん”として顔を出させてもらいました。そのほか、仕事のこと以外で気持ち的に大変だったのは、昔気質な自身父親に育休について伝えたところ、『
そんなに休んで大丈夫か?』『
迷惑かけてるんじゃないか?』とかなり心配されたことです」
高木さんは、「育休は家族の了承がなくても取得できますし、父親に話したのは育休に入ってからだったのでよかったですが、時代が違えば感覚や価値観が違ってくるので、説明してわかってもらうのが大変でした」と振り返る。
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意
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