ニュース

73歳“スリのたえちゃん”の「窃盗事件裁判」で明かされた悪質な犯行手口。娘が涙ながらに語った悲痛な思い

判決の結果は…

池袋

スリのたえちゃんは池袋のデパートで2件目の犯行に及んだ

 3月15日、第2回公判では論告・求刑が行われた。検察官は、被告人は常習性が顕著で、犯行の手口が巧妙で悪質であると指摘。また、再犯を繰り返しており、「規範意識が頓馬(トンマ)していると言わざるを得ず、更生力も皆無」とも述べ、懲役5年を求刑した。  一方で弁護人は、被告人の犯行は「決して望んで職業的にスリをしているものではない」としつつ、犯行についても「被告人自身にも、なぜスリを繰り返すのか上手に説明できず、精神的なもの」と主張。被害者へ2万円の賠償金を払ったことなどを理由に、寛大な処分を求めた。  結局のところ、3月26日の判決公判で懲役4年の実刑判決が言い渡された。

窃盗症の再犯者が多い理由

 これまで筆者は多数のスリや万引き事件を傍聴してきた。公判請求されたもののほとんどは、被告人は再犯を繰り返し「悪質」と判断されたものばかり。そして犯行の動機は、育児や離婚によるストレス、摂食障害など様々だ。  そして、「窃盗症(クレプトマニア)」も多いといわれている。「窃盗症」とは、物を盗みたいという衝動を制御できなくなる病気。盗む目的のため、万引きした商品は捨ててしまうといったケースも存在している。  法務省が公表している統計データによると、窃盗罪での刑務所入所者の約50%が出所後5年以内に刑務所へ再入所するという(2018年データ。法務省「犯罪白書」より)。これまで筆者が傍聴した事件の多くは、出所後の1年ほどで再犯をして刑務所へと戻るケースばかりだ。  ただし、決して「窃盗症」だからといって大幅に減刑されるべきではない。それよりも、司法が「治療」を重視した更生プログラムや社会復帰支援などを行うべきではないだろうか。「窃盗症」の多くは原則的に実刑判決の再犯者ばかり。多くの被告人が、公判では「精神科に通院します」と誓うが、数年後の出所時には診察費などの事情から通院が困難となり、結局再犯してしまうことが現実なのだ。  被告人は最終陳述で、「もう今回で最後にして、残された人生を人間らしく生きたいです」と語っていた。はたして、出所後にまたも“スリのたえちゃん”となることなく、余生を送ることはできるのだろうか。 取材・文/学生傍聴人
2002年生まれ、都内某私立大に在籍中の現役学生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴にハマり、傍聴歴6年、傍聴総数900件以上。有名事件から万引き事件、民事裁判など幅広く傍聴する雑食系マニア。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行っている。
X(旧ツイッター):@Gakuse_Bocho
1
2
3
おすすめ記事