更新日:2024年04月20日 15:38
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“銀座のホステス兼女医”が語った過去。いじめられた学生時代、美容整形に400万…医師の肩書なんて「どうでもいい」

「神様に謝りたい衝動」を抑えられなくなる

 囲んで罵声を浴びせる、椅子を蹴る、後ろから物を投げられるなどの暴力をクラスメイトから日常的に受け、自宅に帰れば死物狂いでヴァイオリンを練習する日々。鷹見氏の心身は限界を迎えつつあった。 「中学1年生のとき、発作的に自宅の3階から飛び降りました。しかし3階はそれほどの高さではなく、助かってしまいました。そのとき、『まだヴァイオリンでプロになっていないから死ねない』と思いました」  命に別状はなかったものの、鷹見氏はこのあたりから急速に壊れ始める。たとえばこんな具合だ。 「ふとしたとき、神様に謝りたい衝動を抑えられなくなりました。頭に神様を冒涜する絵が浮かんできて、それを打ち消すために謝るんです。その発作は重く、たとえ外にいるときであっても、お辞儀や土下座を何時間も繰り返してしまうほどでした。この奇妙な発作は当然、学校のクラスメイトからさらにいじめられる原因になりました。痙攣を伴うため、年頃の子たちのからかいの対象としてはうってつけだったでしょう」

突然「ヴァイオリンを辞めてくれないか」と言われ…

 自宅で発作が起きたときは土下座しながら何度も頭を床に打ち付け、額から血を流すこともあったという。こうした鷹見氏の“症状”は両親も知っていたが、精神科への受診は絶対に認められなかった。 「おそらく、父が精神科医だったからだと思います。狭いコミュニティなので、娘が強迫性障害を抱えていることが他の医師に伝わるのが許せなかったのではないでしょうか。仕方がないので、私は父の書棚から医学書を読み漁り、どうにか症状を鎮める方法を自分なりに編み出しました」  学業成績の良かった鷹見氏は地元の進学校へ入学し、中学校時代の加害者たちと離れる。いじめの対象になることはなかったが、さりとて誰からも気にもされない“凪”のスクールライフを送った。しかもこの”凪”はすべての停止であり、穏やかとは真逆のものだった。 「高校から帰宅してヴァイオリンを弾こうにも、何もできない時間が長く続きました。ケースを開けてヴァイオリンを眺めて数時間経ってしまうこともあったんです。私がサボっていると勘違いした母からは、『将来よりもその場の楽しみを取る凡人だったのね』などの辛辣な言葉を浴びせられました。部屋にカメラを設置して私の様子をしばらく監視していた母ですが、どこかで見切りをつけたようです。あるときから、『ヴァイオリンを辞めてくれないか』と言い出しました。これまで少なくない投資をしてきた母にとって、“損切り”だったのでしょう」
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「親から逃げるため」東大を目指す
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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