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“もはや安くない”鳥貴族。客離れを招いた“相次ぐ値上げ”は悪手だったのか

立地戦略が裏目に出て苦しむことに

居酒屋業態という事もあり、コロナ禍で鳥貴族は多分に漏れず業績が大幅に悪化しました。特に駅前・繁華街を中心とする立地戦略も業績悪化に拍車をかけています。21年7月期から連結決算へと移行しているため単純比較できませんが、19年7月期から22年7月期までの業績は次の通りです。 【2019年7月期~22年7月期】 売上高:358億円→275億円→156億円→203億円 営業利益:11.9億円→9.8億円→▲46.6億円→▲24.3億円 店舗数(鳥貴族):659店→629店→617店→620店 とはいえ主力3行からの65億円借り入れや政府から助成金もあり、資金繰り面ではコロナ禍を乗り越えることができました。

なぜ「やきとり大吉」を買収したのか

値上げによる客離れにコロナ禍での業績悪化ーー従来の鳥貴族業態は限界を迎えているのでしょう。近年では新業態を模索する動きがみられます。手始めとして2021年8月に、同社初のファストフード業態として「TORIKI BURGER(トリキバーガー)」をオープンしました。焼鳥バーガーや揚げたチキンを挟んだ「トリキバーガー」など、イメージ通り鶏系のバーガーを主体とする店舗です。現在では2店舗しかありませんが、欧米でのチキンバーガー人気もあり、将来的には海外展開も見据えているようです。 そして2023年1月には、サントリーHDの傘下として「やきとり大吉」を約500店舗展開するダイキチシステム株式会社を子会社化。赤いレトロな看板が目印のやきとり大吉は駅・繁華街から離れた場所に店を構えており、「戦わずして勝つ」を出店戦略としています。20席程度の小型店を主とし、全てFCで運営されています。メニューは統一されていますが、店舗限定のオリジナルメニューもあるようです。 鳥貴族によるやきとり大吉の買収には様々な憶測が報じられていますが、鳥貴族側の規模を拡大したい狙いと、ダイキチシステム側の高齢オーナーによる事業継承問題をクリアにしたい狙いが合致したと思われます。駅前・繁華街に展開する鳥貴族と離れた場所に出店するやきとり大吉は互いに競合しません。また、安定供給先を確保したいというサントリーの思惑も少なからず存在するのではないでしょうか。現在サントリーは鳥貴族とやきとり大吉の両者に酒類を提供し、鳥貴族の株を2%程度保有しています。なおこの買収により、23年3月期における鳥貴族HDの売上高は334億円、店舗数で1,134店舗の規模となりました。
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「社名変更」は海外進出ありきだった
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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