更新日:2024年06月05日 09:51
エンタメ

殺人未遂逮捕の人気ミュージシャン、自殺願望と「音楽死ね死ね死ね…」。何に追い詰められていたのか

これを作り続けたら疲弊するのは当たり前…?

 たとえば、 <派手な痛み 圧に 酷く 強く 耐えて だけど 全部守るって 覚悟決めた あの日の涙には 嘘なんて 嘘なんて 証明だって出来るから 「出来ないでしょ」 じゃあ正義は何処に在るの?> という部分。「ぷす」の作曲は、句読点の存在を感じさせることなく、これを歌い手に一息で歌わせるのです。  しかも、ハイテンポ、めくるめくコードチェンジ、転調。バンド演奏はどのパートもフルボリューム。ストロング系のチューハイをエナジードリンクで割ったテンション。とてもケミカルな味わいがする音楽なのです。  これを、人の肉声で歌わせるアンバランスこそが、ボカロ系の面白さなのでしょう。「傷つけど、愛してる。」も、その点では成功しています。ジェットコースターのような転調、畳み掛ける符割、おそらくは小室哲哉からくる脈略のないキーチェンジ。  これらをひとつの曲の中で有機的に機能させるのではなく、むしろ血流を失ったパーツとして分解されたのちに人工的に組み直される。つぎはぎを隠さずに、あえて加工物であることを強調する仕上がり。  もろい倒錯が生み出す刹那的なスリルは、きわめて現代的なエンターテイメントだと言えるでしょう。
ぷす土下座

2024年2月5日のXより。ライブのステージ上で土下座したらしい

アンチからのメールをそのまま曲に

 また炎上上等といった「ぷす」のキャラクターも、SNS時代にマッチしていました。自分のアンチが実名でメールを送ってきたエピソードをそのまま曲にした「フルネームアンチ」は、瞬時に数値化されるリアクションやアテンションが生んだモチーフです。  曲の長さも1分4秒。出オチこそが音楽である時代の空気をよく理解しています。
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一瞬の刺激を競い合う時代の病
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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