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「赤黒の全身刺青」と「世界最大の軟骨ピアス」…超個性派の古物商が思う「日本社会への違和感」

刺青はライバルであり、「常に闘っている」

大黒堂ネロ氏

<photo by junichi soga>

 フォルムに惑わされず、ひとりの人間としてみてほしい――。その思いの根底には、こんな哲学がある。 「刺青を入れている人でありがちなのは、刺青そのものが自分のアイデンティティになっているケースですよね。そうなると、その人自身ではなく、刺青ばかり興味を持っていかれてしまいます。しかし僕は、常に刺青と闘っているんです。常に変化していく僕の刺青と、それに負けまいとする自分の葛藤があるんです。僕は『ドラゴンボール』の作者・鳥山明先生を尊敬していて、よく外見が『フリーザみたい』と言われるのですが、はからずも刺青が孫悟空で自分がベジータの関係性になっていると思っています。ライバルとして、凌駕しようと切磋琢磨する関係です」  自らに施した刺青がライバルとは、妙な言い回しだ。だが大黒堂氏の「刺青を入れる自分」についての分析はなるほど面白い。 「刺青を入れる際に必ず伴う痛み。これも僕は人生においてひとつのヒントになるのではないかと思っています。痛みというのは自分の弱さを表していますよね。もちろん、自分の弱さを知ったところで、刺青が痛くなくなるわけではありません。けれども、対策を考えて解決することはできます」

幼少期のころから言い表せない孤独感があった

 大黒堂氏の幼少期は、どのような少年だったのか。現在の彼に通じる思想の欠片を、独特の言い回しでこう表現する。 「一言でいうとスケベでしたね(笑)。小さい頃は姉について回って、同年代の女の子と遊んで、『パンツ見えたらラッキー』とか思ってました(笑)。反面、結構悪ガキの一面もあって、近所で3人組とかになってイタズラしたり。かと思えば幼稚園くらいのときから『世界中が自分を監視している』となぜか思ったりして……そんな感じの子でした。言い表せない孤独感はいつもありましたね。いじめられているわけでもなく、みんなの輪のなかにいるのに、ひとりみたいな」
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「親からもらった身体を大切にしろ」に違和感
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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