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“看板だけで2億円”きぬた歯科が至る所に看板を出す理由「実は最強のネットツールだと思う」

看板はSEO対策よりもはるかに効果的

エッジ0709――数だけでなく、バリエーションの多彩さも魅力です。お兄さんは烏帽子をかぶったパターン、弟さんはファイティングポーズの「俺に任せろ!」バージョンなどもあります。 泰和:ふざけたふりをしているだけで、ちゃんとマーケティング戦略を考えているからね。同業者がどんどんマネしてくるので、限界ギリギリまでは攻める。 「上半身裸で両手にインプラントを持つのはどうですか?」と提案されたこともあるけど、今までのことが水の泡になってしまうことは絶対にやらない(笑)。 久和:分院展開している同業者がマネしてくることが多いけど、収支が崩壊しているところが多いよね。彼らのほとんどが自己資本比率は1桁台だから。  でも、僕たちは医院をひとつずつやっているだけだし、自己資本比率は90%以上ある。医療法人の平均が50%くらいなので、僕たちはかなり健全な歯科医ですよ。 泰和:兄さんも俺も利益を最大化しようとしているだけ。収益に対する広告費はコンパクトなものですよ。 ――やっぱり看板の効果はすごいですか。 泰和:実は最強のネットツールだと思う。同業者はSEO対策に何億円もつぎ込んでいるけど、俺たちはそんなことやらない。勝手にSNSやネットニュースが取り上げてくれるから、アナログでローカルな看板が今ではマス広告に化けている。今さらマネをしたところで、もはや俺たちの「数の暴力」には勝てないだろうけど(笑)。

歯科業界は閉鎖社会。看板は挑戦状だった

エッジ0709――ちなみに最初に看板を出されたのは、いつ頃ですか。 久和:僕が開業して12年目のときだから’04年かな。横浜中心部の高島の看板です。思いつきでしたが、すごくウケました。それを見て、弟がマネしたんです。 泰和:違ぇよ。そんなの知らずに、こっちもやってたんだよ! 久和:だけど、歯科業界はものすごく閉鎖的な社会で、当時は離れたところに看板を出す医院なんてなかったんです。案の定、行政から「医療法に則ってない」とクレームが来ました。 ――顔出しがダメだったんでしょうか? 久和:顔出しは問題ないのですが、「インプラントの金額を入れろ」とか。明記すれば、今度は「字が小さい」とか。でも、字の大きさの基準を聞いても、行政は答えられない。そんなの個人の主観なので、完全な言いがかりなんです。行政も同業者から「撤去させろ」と突き上げられただけなんです。裏では足を引っ張られて大変でした。 ――そんなご苦労があったとは……。 久和:僕たちは代々の歯科医じゃないんですよ。父親は栃木県の小さな町工場の社長なんです。汗と埃まみれになりながら黙々と働いて、僕たちを私立大の歯学部に通わせてくれた。  でも、同級生の5割は親が歯科医。親が医者、親戚が歯医者まで含めると9割が医療関係者の子供なんです。僕たちは何のツテもないなかで身を立てようと必死でした。それが誰もやらなかった看板に繋がっているんですよ。 泰和:今思えばほかの仕事でも良かったんだけど、当時はネットなんかないから情報がなくてね。田舎には歯科医院が少ないから儲かりそうだし、手に職をつけるなら歯科医かなって。 久和:だけど、僕たちが卒業した頃から歯医者が余り始めてしまって。同級生のようなアドバンテージもないし、危機感の中で戦ってきたら、こうなっちゃった(笑)。
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訴訟で徹底抗戦。商標登録で無双状態
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1980年東京生まれ。毎日新聞「キャンパる」学生記者、化学工業日報記者などを経てフリーランス。通信社で俳優インタビューを担当するほか、ウェブメディア、週刊誌等に寄稿

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