更新日:2024年07月30日 14:36
仕事

“もう一人のオオタニサン”は「弱小野球部から世界へ」。数奇なキャリアを追う

今年のWBCで意外な注目を集めたのが、長らく「野球不毛の地」とされてきたヨーロッパ勢の奮戦だった。しかも、選手のほとんどが学生や野球以外の仕事を兼業するアマチュア選手だったことが、大きな話題を呼んだ。 そのヨーロッパで野球の面白さを味わい、イタリア、アメリカ、オーストラリア、ドイツ、クロアチア、ポーランドを9年間も渡り歩いた日本人アマチュア野球選手がいる。田中将大、前田健太ら黄金世代と同じ1988年生まれの大谷尚輝さん(35歳)だ。
大谷尚輝

19年クロアチアカップ優勝に貢献した(本人提供)

弱小野球部出身の「オオタニさん」

「クロアチアの野球ファンの間で『オオタニさん』と言えば、大谷翔平選手ではなく、僕のことかもしれませんね(笑)」 昨シーズンはクロアチアリーグのオリンピア・カルロヴァツでプレー。リーグ優勝に貢献したほか、国際大会で盗塁王を獲得。だが、日本の野球関係者のほとんどは、彼の名前を耳にしたことがないかもしれない。 それもそのはず。中学校の部活で野球を始め、高校時代は都立高校の弱小野球部でプレーし、3年生の春夏は都大会1回戦負け。大学では陸上部に所属し、たまに草野球を楽しむ程度だった。

「イタリアで最も野球が盛んな街」に立ち寄る

転機は社会人2年目の2012年夏。有給休暇を取って、人生初の海外一人旅に出かけたことだった。行き先は多くの世界遺産があるイタリア。 出発直前にインターネットで現地のことを調べると、元西武ライオンズのG.G.佐藤さんがイタリア野球のセリエAでプレーしていることを知った。さらにローマ近郊には「イタリアで最も野球が盛んな街」とされる人口5万人ほどのネットゥーノという街があることも分かった。 「イタリアでも野球やってるんだ。面白そうじゃん! その街にも行ってみるか」。カバンに草野球のユニフォームとグラブを詰め込み、最終日にネットゥーノに立ち寄った。
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食い下がって練習に飛び入り参加
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1980年東京生まれ。毎日新聞「キャンパる」学生記者、化学工業日報記者などを経てフリーランス。通信社で俳優インタビューを担当するほか、ウェブメディア、週刊誌等に寄稿

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