更新日:2024年07月31日 12:16
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“日本最大の刑務所”が「ふるさと納税の返礼品」に。“即完売”した見学ツアーに参加してみた

 都市部の自治体がふるさと納税による住民税の流出に苦慮するなか、東京都府中市が型破りな取り組みを始めた。その名も「府中刑務所プリズンツアー~犯罪のない明るい社会を目指して~」。同市に1万円のふるさと納税をした人に府中刑務所を特別に案内するもので、ふるさと納税の返礼品としては全国で初めての試みだ。  通常は立ち入ることが許されない刑務所の内部はどうなっているのか。なぜ、このような返礼品のアイデアが生まれたのか。7月29日に20組34人が参加したツアーに同行取材した。
府中刑務所

府中刑務所外観

受刑者に人気のテレビ番組は…

府中刑務所

受刑者の居室

 同刑務所は江戸時代中期の1790年に設けられた石川島人足寄場が起源で、1935年に巣鴨から移転し、「府中刑務所」に改称してから89年の歴史がある。そして、現在は収容定員2668人の日本最大の刑務所になっている。  ピッ、ピッ、ピッ……。刑務官が暗証コード、生体認証の二重セキュリティーをクリアすると、「中門」と呼ばれるゲートの分厚い扉が開いた。ここから先が、受刑者が収容されている閉ざされた空間となる。さらに、いくつかのゲートと通路を進み、最初に案内されたのは3畳ほどの広さの受刑者の独房が並ぶ居室棟だった。  意外なことに各独房にはテレビが備えられており、午後7時から9時までの間、受刑者は要望を考慮して事前に決められたチャンネルを見ることができるという。  どんな番組が人気なのかをたずねると、刑務官が「お笑いや歌番組などですね。あとは、ちょっと理解に苦しむのですが、『警察24時』が大人気です。『あんな感じで逮捕されたんだよ』って、はしゃいでいた受刑者もいましたね」と苦笑いで明かしてくれた。  基本的には受刑者の要望を受け入れており、時間帯が合えばオリンピックの試合も視聴可能だという。

“まるで老人ホーム”のような一角が

 続いて案内されたのは、受刑者が作業をする工場エリア。実はこの場所が、日本の刑務所が抱える2つの大きな課題を物語っていた。  木工や金属加工などの生産作業を行う第10工場。その一角で、一部の受刑者がストレッチ運動やパソコンを使った脳トレ、数メートル先の台にお手玉を投げるなどの作業を行っていた。この姿だけを見れば、まるで老人ホームだ。彼らをサポートしていた作業療法士は「ここでは高齢によって日常生活に支障がある受刑者が身体機能の維持向上を図っています。彼らはもう普通の刑務作業をこなすことができないのです」と説明する。
府中刑務所

パソコンが整然と並ぶオフィス

 また、終盤に案内された第19工場でも驚くべき光景が広がっていた。町工場のような建物の2階へ上がると、パソコンが整然と並ぶオフィスが突然現れた。しかし、働いているのはスーツ姿のサラリーマンではなく、白いタンクトップに作業帽の受刑者だ。外部から委託された業務を行っているという。
府中刑務所

ビジネススキル科の職業訓練

 その隣のガラス越しの部屋には「ビジネススキル科」という表札が掲げられ、専門学校のような職業訓練も行われていた。刑務官によると「その他に自動車整備科、介護コースなどもあり、自動車整備士や介護福祉士の資格を取得することができる」という。
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ここでも高齢化が…日本人受刑者の平均年齢は「52.9歳」
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1980年東京生まれ。毎日新聞「キャンパる」学生記者、化学工業日報記者などを経てフリーランス。通信社で俳優インタビューを担当するほか、ウェブメディア、週刊誌等に寄稿

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